ドイツ:使用済み燃料処分場のサイト選定に関する委員会が最終報告書
ドイツに現存する使用済み燃料と高レベル放射性廃棄物(HLW)について、最終処分場の建設サイト選定基準や安全要件を審議してきた政府の代表者委員会は7月5日、約700ページにおよぶ最終報告書を政府と議会に提出した。国民に対して可能な限り高い安全性が保証される処分原則を考慮した結果、関係する自治体や国レベルで市民が参加する3段階のプロセスによりサイト選定を行うべきだとしたほか、処分方法としては岩塩か泥岩、あるいは結晶質岩を母岩とする、少なくとも地下300mの地層中を勧告。2017年にも選定プロセスを開始し、2013年のサイト選定プロセス法が定める2031年までに候補地を議会に提案するとした一方、処分場の実際の操業開始が来世紀にずれ込む可能性も示唆した。また、処分場建設サイトとする計画が2013年に白紙撤回されたニーダーザクセン州ゴアレーベンについて、同報告書は候補地の1オプションとして温存しているため、環境保護派からは早くも批判の声が上がっている。
ドイツでは2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて、国内の原子炉を2022年までに全廃する政策を進めている。しかし、それまでに発生する分も含めて使用済み燃料とHLWが現存するという事実に変わりは無く、議会は2013年に最終処分場の建設サイト選定プロセスを改めて開始しなければならないという超党派の認識で合意。今回報告書を提出した代表者委員会は、キリスト教民主同盟(CDU)と社会民主党(SPD)の幹部が共同議長を務めており、連邦および州政府のほか、産業界、科学者など各界の代表を含めた33名の委員が約2年間にわたって審議を行っていた。
この報告書について、ドイツ原子力産業会議(DAtF)は5日に声明文を発表しており、「選定プロセスと基準の検討に加えて、委員会は包括的かつ非常に意欲的な市民参加プロセスを作成した」と評価。選定プロセスに関係する地域も含めて市民が広範囲に参加する機会が与えられるとした。しかしその一方で、委員会の一部には過去の議論に固執する傾向があったと指摘。将来の設計において結論を導き出すよりも、過去の議論を重要視する側面が時折見受けられたとし、これが作業の負担を重くするとともに、プロセスにおけるすべての課題が一貫して科学的根拠に基づかないものになったと述べた。例としてDAtFは、委員会が暫定設定した廃棄物コンテナ均一の最大制限温度に触れ、これは委員会による科学的発見事項に反しているとした。また、今後、将来の世代に配慮した処分計画を実現できるかは、同委員会の勧告を法的に実行できるかどうかにかかっているとの認識を明らかにした。