米ニュースケール社:英社と共同でSMR原子炉容器上蓋の実証鍛造へ
米オレゴン州ポートランドを本拠地とするニュースケール・パワー社は7月7日、同社製小型モジュール炉(SMR)を将来、英国内で建設するのに必要な製造技術を開発するため、原子炉容器(RV)上蓋を英国の大型鋳鍛造品製造企業であるシェフィールド・フォージマスターズ・インターナショナル社(SFIL)と共同で実証鍛造することになったと発表した。ニュースケール社製革新的SMRの仕様書を使用する際、必要となる資金を同社が提供し、SFILが2017年末までに上蓋を実証鍛造した後、2020年代までに英国で製造した同SMRを英国内の送電網につなぐという計画。同社は2015年10月、英国原子力市場に同社製SMRで参入を目指すとの方針を発表し、「2035年までに4,000億ポンド(約52兆6,000億円)相当への成長が見込まれる世界のSMR市場で、英国の原子力産業は早くから中心的役割を担う」と指摘していた。その2週間後には、米国のウェスチングハウス社も英国政府に同社製SMRの共同開発を提案。今年3月になると、英国政府が「英国にとって最適な価値のあるSMR設計の特定コンペに着手する」と発表しており、同国市場をターゲットに定めたSMR開発競争は次第に明確な形を取りつつある。
今回の計画は、英国原子力産業界において革新的鍛造技術と製造ソリューションを開発・実証するという「革新的UKエネルギー促進プロジェクト」の一環という位置付け。SFILがリーダーを務める同プロジェクトには、ロールス・ロイス社、溶接協会、シェフィールド大学、シェフィールド・ハラム大学、および先進的原子力機器製造研究センター(N-AMRC)の5団体がパートナーとして参加協力しており、2015年6月から2017年12月までのプロジェクト期間中に400万ポンド(約5億2,600万円)の予算投入を予定している。RV上蓋の実証鍛造計画において、ニュースケール社はオブザーバーという立場になるが、同社は英国内で同社製SMRを開発するだけでなく、将来的には英国から輸出も行うとの構想を明示。これは英国のエンジニアリング・産業基盤と連携することによってのみ達成可能だとした。SFILも、一層柔軟な発電ソリューションとなるSMRは、民生用原子力発電産業に大改革をもたらすと指摘。大型機器を工場で効率的に製造することはコスト効果の高い開発には欠かせないとした上で、同社にはこの規模の民生用原子力鍛造品の生産では比類無い実績があると強調した。
ニュースケール社の「ニュースケール・パワー・モジュール」は電気出力5万kWの小型一体型PWRで、最大12基連結することで出力を60万kWまで拡大することが可能。受動的安全系を備えているため、全電源喪失時に運転員の介入や追加の冷却水およびAC/DC電源なしで、無期限に原子炉を自己冷却することができるという。英国における開発計画では、英国のエンジニアリング企業や製造・建設会社に詳細を知ってもらうため、ニュースケール社は7月13日に「サプライヤー・ディ」をシェフィールドのN-AMRCで開催する。一方米国では、同SMRは2013年にエネルギー省(DOE)が実施する官民折半のSMR商業化支援プログラムの対象設計の1つに選定されており、ニュースケール社は5年間で2億1,700万ドルの支援金を受領中。今年後半にも米原子力規制委員会(NRC)に設計認証(DC)を申請する計画で、順調に進めば2024年にアイダホ州で初号機の運転を開始できるとしている。