NY州公益事業委:州北部の原子力発電所に炭素ゼロ排出クレジットを与える提案

2016年7月12日

米ニューヨーク州公益事業委員会(PSC)のスタッフは7月8日、州北部に立地するフィッツパトリック(87.9万kWのBWR)、ギネイ(60.2万kWのPWR)、およびナインマイルポイント(60万kW級BWRと130万kW級BWR)の3原子力発電所を念頭に、炭素を出さない発電設備に対する財政支援プログラム「ゼロ排出クレジット(ZEC)」を提案した。これに対するコメントを18日までの日程で募集する予定。発電量に応じてZECを通じた支払いが受けられるというこのプログラムが承認されれば、その適用が許された原子力発電所では早期閉鎖のリスクを回避できる可能性があるため、関係事業者は発電所における次回の燃料交換など、事業上の重要判断を下す前にPSCが早急に結果を出すことを期待している。

米国では、2030年までに発電部門からのCO2排出量を2005年レベルから32%削減するというクリーン・パワー計画に基づいて、環境保護庁(EPA)が2015年8月に、温室効果ガスの排出量削減が可能となるようなエネルギー計画の作成を各州政府に指示した。NY州では今年1月、2050年までに温室効果ガスの排出量を1990年の80%まで削減するという同州の長期目標を達成するため、新たなクリーン・エネルギー基準(CES)案を対応策として検討中。これを実行に移すためのプログラムの1つが「北部にある3原子力発電所の維持」で、スタッフはこれまでに寄せられた様々な意見を斟酌した上で、今回のZECプログラムを改めて提案した。スタッフの分析によると、低価格な天然ガスにより電力市場の卸売価格は北部で稼働する原子力発電所の平均運転コストよりも大幅に低くなる見通し。こうした状況は米国内の多数地域で見受けられるが、発電部門からのCO2削減においては原子力が重要な役割を担うとの認識が広がりつつあるとしている。

ZECは電力の長期売買契約の一種で、公共の必要性が認められた炭素排出量ゼロの発電所のみが対象。政府の省庁横断型作業部会(USIWG)が算定する「炭素の社会的費用(SCC)」等の指標に基づき、PSCが設定した金額を発電事業者に長期的に補償する。プログラム期間は2017年4月1日から2029年3月末までの12年間となっており、これを2年毎に6分割してMWhあたりの支払価格を設定。この価格は徐々に上昇していく予定で、有資格の電力小売り事業者と卸売業者は、NY州エネルギー研究開発局(NYSERDA)からZECを購入する複数年契約を結び、原子力発電事業者はそれに従って年毎の支払いを受けることになる。なお、NY州南部にはエンタジー社のインディアンポイント原子力発電所(100万kW級PWR×2基)も稼働しているが、PSCスタッフは「電力市場から高いレベルの利益を享受している」として、これら2基をプログラムの対象外とする判断を示している。