イランとブルガリアが原子力分野の協力強化で合意 

2016年7月13日

イランのジャハーンギーリー第1副大統領と会談するブルガリアのボリソフ首相(=左)©ブルガリア政府

イランのジャハーンギーリー第1副大統領と会談するブルガリアのボリソフ首相(=左)  ©ブルガリア政府

 ブルガリア政府は7月12日、原子力平和利用分野における経験の共有など、イランとの協力を一層強化していくことで両国政府が合意に達したと発表した。ブルガリアのB.ボリソフ首相がイランを公式訪問したのを機に、同行したT.ドンチェフ副首相とT.ペトコワ・エネルギー相はテヘランで、イラン原子力庁(AEOI)のA.サレヒ長官とエネルギー部門の両国間協力について協議。両国はともに、ロシア型PWR(VVER)を国内で運転しており、ブルガリア国営テレビによると、同国で頓挫したベレネ原子力発電所用にロシア企業が製造した機器をイランが購入する可能性についても話し合われたとしている。 

 ブルガリアでは2013年、資金調達の目処が立たないとして議会がベレネ原子力発電所1、2号機(各100万kW級PWR)の建設を断念。その代わり、原子力インフラが整った既存のコズロドイ原子力発電所に7号機として1基(100万~120万kW)を増設するとし、ウェスチングハウス社のAP1000設計を採用する案が検討されていた。今回の協議においてブルガリア側は、ロシアのアトムストロイエクスポルト(ASE)社がベレネ計画用に製造した機器の代金5億3,500万ユーロ(約616億円)について、国際仲裁裁判所が今年6月にブルガリア電力公社(NEK)にASE社への支払いを命じた事を伝えた。これらの機器は未使用のままロシアの倉庫で保管中であるため、裁判所はその引き取りについてもNEKに指示。ボリソフ首相は、これらの機器に関する全文書を出来るだけ早急にイラン側に提供すると述べたと伝えられている。

 ブルガリアはこのほか、コズロドイ発電所5、6号機(各100万kWのロシア型PWR)だけで国内電力需要の33%を賄っている事実に言及。すでに閉鎖済みの1~4号機も含め、同発電所における40年以上の運転経験を通じて専門的知見を蓄積しており、高いレベルの安全性と放射線防護を維持していると述べた。同発電所は国内のエネルギー供給バランスを保証する主要ファクターであるとともに、基盤施設であり続けると指摘しており、こうした経験に基づいて使用済み燃料の貯蔵に関する専門的知見をイランに提供することもできると提案。サレヒ長官に対しては、同分野における両国間のさらなる協力で技術面の詳細を協議するため、ブルガリアへの訪問を要請したとしている。

 イランでは現在、ロシアとの協力で建設したブシェール原子力発電所1号機(100万kW級PWR)が2013年から営業運転中のほか、同発電所Ⅱ期工事として2基(各100万kW級PWR)を増設する契約を2014年にロシアと締結。このほかに同サイトでさらに2基、その他のサイトでも4基をターンキー契約で建設していく方針である。