米エクセロン社:閉鎖予定のフィッツパトリック原子力発電所購入で交渉開始
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©エクセロン社
2030年までに発電部門からのCO2排出量を2005年レベルから32%削減することを目指した連邦政府のクリーン・パワー計画に基づき、NY州では今年1月、2050年までに温室効果ガスの排出量を1990年の80%まで削減するという州の長期目標を達成するため、電源ミックスの新たな基準となる「クリーン・エネルギー基準(CES)」案を策定。その実行プログラムの1つが「州北部にある原子力発電所の維持」であり、具体的にエンタジー社のフィッツパトリック発電所、およびエクセロン社が所有するギネイとナインマイルポイントの両原子力発電所を特定した。これに続いて今月8日にPSCスタッフが提案したのが炭素の「ゼロ排出クレジット(ZEC)」プログラムで、これは発電施設の炭素を排出しない特性を高く評価した上で、政府の省庁横断型作業部会(USIWG)が算定する「炭素の社会的費用(SCC)」等に基づいた支援金を発電量に応じて事業者に支払うという内容。18日までの日程でコメント募集を開始していた。
エクセロン社は、同プログラムが承認された場合、自由化された電力市場で早期閉鎖の危険にさらされているギネイとナインマイルポイントの両原子力発電所に来春にも約2億ドルを再投資し、運転を継続していくと明言。これらの発電所では1400名の常勤従業員に年間2億6,600万ドルの給与を支払っているほか、地方税として年間4,700万ドルを納付。これらを閉鎖すれば、その容量はCO2を排出する電源でリプレースしなければならず、NY州では低炭素な未来への効果的な橋渡し電源を失うとともに、環境保全のために自らが掲げた目標を達成することは不可能になるとした。
その上で、同社はフィッツパトリック発電所の購入計画についても触れ、「A.クオモ州知事のリーダーシップにより、当社は数千もの熟練労働者を抱える重要な発電所を救済し、運転継続させる機会を得た」と強調。新しいプログラムの実施により、同社ではフィッツパトリック発電所の閉鎖決定を覆すのに必要な燃料交換とシステムのアップグレードで、何億ドルもの投資を来年1月に行う自信が得られるとした。同発電所の経済的価値については、今年4月にPSCが公表した分析結果、および大手コンサルティング企業のブラトル・グループが昨年12月に公表した独自調査の結果から、年間10億ドル以上の恩恵がNY州にもたらされると指摘している。