英国:原子力サイトのクリーンアップ120年分の経費を1,170億ポンドと見積
英国で古い原子力施設の債務処理を担当している原子力廃止措置機構(NDA)は7月13日、国内17か所の原子力関連サイトのクリーンアップ経費について、約120年の作業プログラム期間中に1,170億ポンド(約16兆3,400億円)かかるとの見積結果を発表した。毎年改定している原子力債務引当金の報告書で明らかにしたもので、これらのサイトの多くでは廃止措置作業が22世紀まで続くと指摘。これほど長期の時間枠においては、様々なプランや予測事項が技術革新や政府の政策変更、経済情勢、および環境問題などに影響されるため、提示した見積額はこのような将来的な仮定に左右される情報に基づくとしている。
NDAは政府外公共機関であり、政府に代わって英国全土で管理している国有時代の歴史的原子力サイトは、最も古いもので原子力産業黎明期の1940年代に遡る。具体的には、ドーンレイやウィンフリスなど当時使用されていた研究サイト、セラフィールドのようにかつて核兵器用核物質の生産に使われていた施設、第1世代の旧型ガス冷却(マグノックス)炉が設置されていた原子力発電所、および現在も稼働中の核燃料加工プラントと再処理施設など。今回、債務引当金として提示した見積額は、これらの廃止措置や建屋の解体・撤去、すべての廃棄物の管理・処分、土地の復旧といった作業の予測経費をまとめたものだが、実際の作業はNDAの代わりにそれぞれのサイト認可会社(SLC)が実施している。
NDAは近年、廃止措置に必要な年間コストを約30億ポンド(約4,200億円)と見積もっており、このうち3分の2は政府が拠出。残りは、海外からの委託再処理や使用済燃料管理といったNDAの商業活動から得られる収益を充てている。また、セラフィールドには稼働中のプラントもあり、2015年から2027年までにこれらから得られる収益は約100億ポンド(約1兆4,000億円)と予測した。今年のクリーンアップ経費見積では、英国全土で今後120年ほどの間に実施する作業のコストを約1,170億ポンドとしたが、これは前年の見積額とそれほど変わらないという。ただし、これらの作業は22世紀まで続いていくため、予測した数値は必然的に不明確になる。例としてNDAは、作業の進め方や適切な技術の特定などを多くのサイトで明確に決定するまでに数年を要する点に言及。このような不確定要素の存在から、NDAでは見積額が潜在的に現実的なものとなるよう、現時点で入手可能な最良のデータに基づき、950億~2,190億ポンド(約13兆2,700億~30兆5,900億円)という範囲の額をまず算出した。さらに、NDAが見積額を公表する際には単一の数値が求められるため、財務省が設定したレートで現在価格に修正するとともに、インフレ調整も行ったと説明している。
なお、現在稼働中の第2世代の新型ガス冷却炉(AGR)は民間のEDFエナジー社の所有であるため、将来的な廃止措置経費は同社が原子力債務基金を通じて積み立てるとした。また、これから民間部門が建設する次世代の原子力発電所も、廃止措置計画とコストの見積など、予め準備が行われる予定。最新の原子炉設計は初期のものと比べて格段に効率化されていることから、廃棄物の発生量がかなり少なくなるほか、解体経費も安く済むとNDAは予想している。