英国で約20年ぶりの新設計画、ヒンクリーポイントC発電所に最終投資決定
英国で稼働中の原子炉全15基を所有するEDFエナジー社は7月28日、南西部サマセット州で160万kW級の欧州加圧水型炉(EPR)を2基建設するというヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所計画について、親会社のフランス電力(EDF)取締役会が最終投資決定(FID)を票決したと発表した。これにより、同社社長には計画の推進で必要となる契約や協定すべての調印手続を本格的に進める権限が与えられ、約36%の出資を約束した中国広核集団有限公司(CGN)や英国政府、および主なサプライヤーとの契約に調印する条件が満たされたと説明。2019年半ばにも最初のコンクリート打設を実施し、1995年に運転開始したサイズウェルB原子力発電所以降、初の新設原子炉となるHPC初号機の運転開始を2025年に目指すとした。ただし現地の報道によると、T.メイ新政権で原子力部門を管轄することになったビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)のG.クラーク大臣はこの票決の直後、同プロジェクトについて「すべての要素を今一度、注意深く検証し、今秋に最終的な判断を下す」と述べた模様。180億ポンド(約2兆4,500億円)という巨額の総工費がネックとなり、同計画のFIDは再三にわたって延期されていたが、この報道を受けて初号機の完成はさらに遅れるとの見方も出ている。
英国では2011年7月18日に議会下院が、2025年までに原子炉の新設が可能な候補地としてヒンクリーポイントを含む8サイトを指定した国家政策声明書(NSP)を承認。これに続いて、イングランド地方南西部・西サマセット地区の議会が同月28日、同地区内でHPC計画における事前準備作業の実施を許可した。EDFエナジー社は翌日、原子力サイト許可(NSL)を原子力規制局(ONR)に申請するとともに、環境認可を環境庁に申請。仏アレバ社とは、製造に長期を要する圧力容器の鍛造契約を締結した。2012年になると、ONRは11月に原子炉建設サイトへの許可としては25年ぶりとなるNSLを同計画に与えたほか、12月には英国仕様のEPR設計に対する設計容認確認書(DAC)の発給を承認。2013年3月には、当時原子力部門を管轄していたエネルギー気候変動省(DECC)が、英国の原子炉新設計画としては初めて、HPC計画に開発合意書(DCO)を発給した。その後政府は同年10月、HPC発電所からの発電電力を92.50ポンド/MWh(約12,600円)で買い取ることでEDFグループと合意。こうした財政支援について欧州委員会(EC)は2014年10月、EU競争法の国家補助規則に適合するとの判断を下していた。
英国のフィナンシャル・タイムズによると、EDF取締役会の票決は反対派の取締役が終盤まで抵抗するなど紛糾し、審議中に1名が「リスクが高すぎる」として辞職。賛否は10対7の僅差であったという。また、2007年にT.ブレア政権が原子力発電所新設に向けたエネルギー政策を打ち出して以降、英国の後続政権はHPC計画推進の立場を取っているが、7月に新政権を発足させたメイ首相は未だ個人的に支援表明を行っていない。一方、BEISのクラーク大臣は今回の発言の中で、原子力は英国のエネルギー供給ミックスにおける重要要素であると前置きしていた。新内閣のP.ハモンド財務大臣も就任直後、同計画がキャメロン前政権のエネルギー政策における重要部分であったことから、「新政権もこれを確実に進めて行かねばならない」と述べたと伝えられている。