フランス電力:90万kW級原子炉の運転期間、50年に延長へ

2016年8月5日

 フランスで稼働する商業炉全58基を所有・運転するフランス電力(EDF)は7月29日に今年上半期の連結決算表を公表し、最古のフェッセンハイム原子力発電所を除く90万kW級の原子炉、32基すべての運転期間を現行の40年から50年に延長する方針を明らかにした。同決算表は同月28日の取締役会で承認されたが、これらの原子炉で会計上の償却期間を50年間に延長したことで、資産償却費が削減されるなどのプラス効果が損益計算書にあったとしたもの。F.オランド大統領が2016年中の閉鎖を公約していたフェッセンハイム発電所の2基については、運転継続を認めるか否かの判断に先入観をもたせないため、今年1月1日時点で延長対象から除外。10年毎に行われる大規模な安全審査の結果から、原子力安全規制当局(ASN)がユニット毎に決定する事項である点を強調した。また、90万kW級原子炉よりも新しい130万kW級の20基、および145万kW級の4基は、期間延長条件が満たされていないとして、今のところ40年のまま据え置くとしている。

 今回の方針についてEDFは、国内の原子力発電所を40年を超えて運転するという同グループの産業戦略と、償却期間の延長とを一致させる技術上、経済上、および運営管理上の条件がすべて整ったからだと説明。これらの原子炉が少なくとも50年間、運転を継続する技術的な能力に基づいているとしており、このような判断は国際的ベンチマークとしても支持されているほか、既存炉の安全レベル維持と運転期間延長を目的とした大規模投資計画「グラン・カレナージュ」の一環でもあるとした。そうした投資により、4回目の10年審査(VD4)を終えた後の90万kW級原子炉の安全性は、世界でもトップクラスという欧州加圧水型炉(EPR)に近いレベルまで近づけられると強調。VD4の内容は徐々に、ASNの指摘を受けてEDFが合意した安全性の改善課題や誓約事項に焦点を当てたものになりつつあるとした。

 損益決算書に対する償却期間の延長効果としてEDFは、資産償却費等が削減されるほかに、臨時損益項目を除いた純利益は6月末時点で3億ユーロ(約338億円)増となり、通年では6億ユーロ(約676億円)の増加になる計算。バランス・シートへの影響は、今年1月1日時点で原子力引当金を、スケジュールの延期により21億ユーロ(約2,364億円)削減したことと一致していると説明した。