英国:高速実験炉の廃止措置で1次系冷却材の処理完了
英スコットランド北部でドーンレイ・サイトの廃止措置事業を運営するドーンレイ・サイト・レストレーション社(DSRL)は8月5日、閉鎖済みの高速実験炉(DFR)から出た高レベルの放射性液体金属冷却材、約68トンの処理が完了したと発表した(=写真)。原子力廃止措置機構(NDA)が管理するサイトの中でも、非常に危険性が高いとされていたNaK冷却材(ナトリウムとポタジウムの混合)を1次系から抜き取った後、水素ガスと塩水に安全に転換するという作業を10年かけて終えたもの。欧州で最も複雑な廃止措置プログラムである同サイトの作業は今後、原子炉容器から約1,000もの増殖用パーツを除去する作業にシフトし、その後予定されている全長9kmの冷却材配管と原子炉の除染および撤去に備えるとしている。ドーンレイ・サイトではDFRのほかに高速原型炉(PFR)や材料試験炉(DMTR)などの閉鎖済み施設が多数残存しており、当初、同サイトの廃止・復旧計画を担当していた英原子力公社(UKAEA)は2002年、同計画を50~60年かけて実施すると発表。2005年にNDAが民生用原子力サイトのクリーンアップ・プログラムの責任機関として創設された際、すでに一部民営化していたUKAEAはNDAの契約企業となり、当時傘下に置いていたDSRLが原子力施設検査局(NII)から認可を受け、同サイトによる環境や住民へのリスクを許容レベルに軽減するため、燃料の撤去や建屋の除染、および放射性廃棄物の長期貯蔵や処分を担当している。1962年に世界初の高速炉として送電開始したDFRは、1977年3月に閉鎖され、その直後に2次系から73トンの液体金属の抜き取りが行われた。その後、昨年11月までに2次系の液体金属冷却材の処理や、タービンの撤去とその建屋解体、原子炉と熱交換器をつないでいた配管などの撤去を実施。また、燃料貯蔵槽の機材とスラッジの撤去やNaK処分用プラントの建設を完了したほか、増殖用パーツ撤去プラントの建設も進めていた。
NaKは水や空気にさらされると激しく反応し、発火することもあるため、その取り扱いには特に複雑な技術的課題が付随。このため、NaKの抜き取りと転換作業は窒素ガスの環境下で行うなど、ドーンレイ・チームはサプライ・チェーンと連携し、長期間にわたって難しい作業を続けたという。大半のNaKは2012年に抜き取りが終わっており、その後は配管や構造物の底部に残っている分の撤去作業を実施。最終段階は特に作業が難しく、原子炉部分に遠隔操作で穴を開ける技術的解決策などをきめ細かく開発する必要があったとしている。