IAEA:カイロでアラビア語の「核セキュリティ国際スクール」開催

2016年8月22日

©エジプト原子力放射線規制庁

      ©エジプト原子力放射線規制庁

 国際原子力機関(IAEA)は8月16日、中東・アフリカ諸国における核セキュリティへの理解促進と地域レベルでの核セキュリティ・インフラの増強を目的に、初のアラビア語による「核セキュリティ国際スクール」をエジプトのカイロで開催したと発表した。この国際スクールは、IAEAが2011年以降、主に若者を対象にイタリアの国際理論物理センターと共同作成したカリキュラムを使って、同国のトリエステで開催している一連の研修コースの1つ。核物質の盗難や悪用、原子力関連施設における妨害工作など、世界では核セキュリティに対する懸念が増大していることから、IAEAは加盟国との協力により、核物質や放射性物質の利用と貯蔵、および輸送における防護などを通じて、世界全体の核セキュリティの枠組強化に取り組んでいる。しかし、アラビア語による教育資源が不足しているため、いくつかのアラビア語諸国においては多くの警察官の核セキュリティ問題に対する理解が未だに十分とは言えない状況。今回のような特別仕様のコースは、IAEA加盟国であるなしに拘わらず、アラビア語圏で原子力関連産業に携わる若者が核セキュリティについて学ぶ絶好の機会になったとしている。

 カイロで開催した国際スクールには、ホスト国エジプトのほかにバーレーンや、ヨルダン、クウェート、アラブ首長国連邦(UAE)、アルジェリア、モーリタニア、モロッコ、ソマリア、チュニジアといった中東・アフリカの14か国から33名が参加(=写真)。原子力規制当局者や原子力施設の運転員、学者だけでなく、税関や警察機関といった核セキュリティの最前線に立つ関係者が加わった。トピックとしては、核セキュリティに関する国際社会や国家の法的枠組、リスクインフォームド・アプローチ、核物質と放射性物質およびその輸送活動や関連施設の防護、コンピューターと情報セキュリティ、核セキュリティ文化、核法医学と犯罪現場管理などを取り上げ、これらに関する包括的な情報を参加者に提供。講義のみならず、ケース・スタディを取り入れて参加者に解決策を模索させた。また、実用的な演習も実施しており、脅威に対抗する実際のプランや手順に今回の知識が統合されるよう意図したとIAEAは強調。参加者は核物質や放射性物質の不法取引を追跡する探知装置の使用法などについても、実践的な経験を積んだとしている。

 IAEAは今後、トリエステとカイロの国際スクールに加えて、インドネシアのジャカルタでアジア・太平洋地域の参加者を対象とした同様のプログラムを計画。ナイジェリアやモロッコのように、アフリカで英語やフランス語、およびスペイン語が使用されている諸国でも、2016年から2018年までの間に国際スクールの実施を検討している。