EDFエナジー社CEO、ヒンクリーポイントC発電所の必要性 強調
英国で20年ぶりの新設計画となるヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所建設計画について、事業者であるEDFエナジー社のV.デリバス最高経営責任者CEO(=写真)は8月28日、同計画に関する人々の疑問点に答えるという主旨の意見記事をサンデー・テレグラフ誌に掲載した。同社の親会社であるフランス電力(EDF)が7月28日に同計画を実行に移す最終投資決定を票決した直後、発足したばかりのT.メイ政権は「すべての要素を今一度、注意深く検討した上で秋に最終的な判断を下す」と発表。これを受けて、HPC計画の実現を危惧する声が新聞やテレビなどを大きく賑わせているが、デリバスCEOは政府のこうした判断を「理解できるし大いに尊重する」とした上で、同計画に参加する中国パートナーを信頼していること、将来的な電力価格で正確に比較すればHPC発電所の発電電力は必ずしも高額にならないことなどの見解を披露している。同CEOの認識では、何人かの批評家はHPC計画への投資が英国にもたらすプラスの影響や重要性を見過ごしており、物事の大局を見失うという危険を冒している。中国は同計画に対し60億ポンド(約8,100億円)を超える投資を行う見通しだが、これは世界最大規模の民生用原子力開発プログラムを進める中国で、EDFが過去30年にわたって広核集団有限公司(CGN)と築いてきたパートナーシップによる恩恵だと説明。両社の連携により、 広東省の台山原子力発電所ではHPC計画で採用予定の欧州加圧水型炉(EPR)が2基、完成に近づいている事実に言及した。こうした背景から、EDFは中国パートナーを熟知し、信頼もしている。それ以上に、英国で独立の立場を有する原子力規制当局が、HPC計画でのセキュリティ問題への取り組みは適切だと判断した上で、サイト許可を発給した点を指摘。原子力プロジェクトにおいては、すべてのスタッフが出身地に関係なく厳しい審査を受けること、HPC発電所でも慣例に従い、制御システムはITシステムとインターネットから切り離す予定であることを明らかにした。
HPC発電所が発電する電力の価格についても、デリバスCEOは「近年の低下した卸売価格と頻繁に比較されているが、正確な比較は将来価格で行うべきだ」としており、CO2対策のコストを考慮した場合、原子力は天然ガスなどの化石燃料を含めたとしても、すべての将来的なエネルギー・オプションに対して競争力を有するとした。英国で近年、風力発電が大幅に拡大しつつあるが、風が吹かない時のバックアップ電力が常に必要であるため、顧客はMWhあたり約10ポンド(約1,350円)の追加コストを支払わねばならず、洋上風力発電でも、最近のプロジェクト・オークションでMWhあたり平均137ポンド(約18,500円)の取引価格が付いていると指摘。HPC発電所の発電電力について、政府がEDFと合意した差金決済取引(CfD)の行使価格92.5ポンド(約12,500円)/MWhより高値になる点を示唆した。
また、英国で新たな原子力産業が一旦、再スタートを切れば、後続の原子力新設プロジェクトではコストが低下していくとの見通しを同CEOは提示。その上で、「我々には経年化した化石燃料発電所に代わる、新しい低炭素電源が必要だ」とした。電力供給における将来的な見通しは、送電網の国際的な連結問題や天然ガス、小型の原子炉開発、再生可能エネルギー、分散型発電など、一層複雑化しているが、解決すべき課題は適正なエネルギー・ミックスの実現である。将来必要とする解決策のすべてを提案できるような単一のエネルギー技術など存在せず、新たな原子力発電所も含めたすべてが必要なのだと力説している。