英国:日本企業出資の新設プロジェクトで公開協議プロセス 進展
英国では現在、国内で約20年ぶりとなる3つの原子力発電所新設プロジェクトが具体的に動いているが、東芝が筆頭株主となっているNuGeneration(NuGen)社のムーアサイド計画、および日立製作所が所有するホライズン・ニュークリア・パワー社のウィルヴァ・ニューイッド計画で、政府への開発同意書(DCO)申請に先立つ公開協議プロセスが順調に進んでいる。このプロセスは、2008年の土地開発・社会資本整備計画法に基づき、少なくとも2回、実施することが義務付けられている。同法の下で原子力発電所の新設は2011年にエネルギー分野の国家政策声明書(NPS)6件の中に盛りこまれ、国家的に重要なインフラ整備プロジェクトと位置付けられていた。事業者は公開協議プロセスで得られる地元住民や関係自治体などからの様々な意見を評価・斟酌した上で、DCOの申請文書を作成することになる。
NuGen社の8月31日付け発表によると、西部カンブリアのムーアサイドにウェスチングハウス(WH)社製AP1000を3基、360万kW分建設するという計画について、カンブリア州全域で今年5月に開始した2度目の公開協議が7月末に終了。約11週の間に学校や建設サイトで34回開催した協議イベントには3,000人以上が訪れるとともに、1,000件以上の意見が書面で寄せられたとした。同社の担当職員も、「カンブリアの州民は建設計画に非常に好意的だった」との印象を明示。西部カンブリアでは予想した通り、建設計画に関する知識レベルが高く、人々は同計画による影響や恩恵を詳細に理解するため、話し合いの場を望んでいたことが明らかになったとしている。同社は2018年にサイト許可を取得するとともに、同年末までに建設計画で最終投資判断を下し、2020年代半ばには3基を完成させたい考えだ。
ホライズン社も同日、ウェールズ地方北部のアングルシー島で少なくとも270万kW分の日立GE社製UK-ABWRを建設する計画に関して、2度目の公開協議を開始した。10月25日までの期間中に、同計画の最新版について地元住民から意見を募るため、島内や近隣のグウィネズ地区、コンウィ町などの15か所で公開展示を行うほか、島内のトレゲレでは同社の提案内容について住民が社員チームと議論することが可能な立ち寄り所を設け、セッションを10回開催する予定。同社のD.ホーソーンCEOは、「原子力発電所の新設には膨大な数の技術的承認や同意を必要となるだけでなく、発電所の運転に対する社会的な許容も必要だ」と述べ、新設原子力発電所がアングルシー島全域で生活の質を向上させるとともに、北部ウェールズの自治体と個人にも莫大な投資や様々なチャンスをもたらす可能性があると強調した。同社は2018年中にDCOとサイト許可を含むすべての許認可を取得し、2020年代前半の初号機運転開始を目指す。
なお、これらの計画で採用されるAP1000とUK-ABWRについては、原子力規制局(ONR)と環境庁(EP)による包括的設計審査(GDA)が今年7月時点で最終段階の第4ステップまで進捗。それぞれ2017年3月と12月に完了すると見込まれている。