南ア:原子力発電所新設候補地でのコメント募集期間を延長
南アフリカ電力公社(ESKOM)は9月2日、原子力発電所新設候補地の1つである東ケープ州タイスプント(Thyspunt)で同社が提出したサイト許可申請に対し、州民からのコメント募集期間を30日延長する旨、地元の官報に掲載する許可を国家原子力規制局(NNR)から得たと発表した。同社はまた、タイスプントに西ケープ州ドイネフォンテイン(Duynefontyn)を加えた2つの候補地について、同社が複数の原子炉と補助施設の建設・運転を計画していることを政府官報で公表する許可も取得。コメントの募集期間は、官報への掲載後30日目が最終締め切り日となるため、掲載日を確定してから9月中に両方の官報に通知事項を掲載するとしている。
南アではクバーグ原子力発電所の2基が1980年代から稼働しているのに加え、「2010年~2030年までの統合資源計画」に基づき960万kW分の原子力発電設備新設を検討中。ロシアやフランス、韓国、中国などが受注に関心を示すなか、ESKOMは多くの建設候補地の中からタイスプントとドイネフォンテインの2か所に絞り込み、それぞれに関する原子力設置サイト許可(NISL)申請書を今年3月にNNRに提出した。NNRはこれら2件の申請書を国内政策と関連法および規制に照らして審査した結果、受理するとの判断を7月28日付けで発表。採用設計はまだ決定していないが、これによりESKOMは、申請内容の一般国民への公開やコメント募集といった後続プロセスの実施が可能になっていた。これはNNRの定める国民参加型プロセスの第1段階で、ESKOMはNISLの発給により影響を受ける個人や団体、組織、地元自治体などからの意見を聴取。第2段階に入ると、NNRが正式な公開ヒアリングを開催予定で、国民は一層深く新設プロジェクトに関わることになる。
ESKOMが8月7日に発表した声明によると、世界は近年、原子力発電設備のさらなる新設に向けて動いている。その根拠として、2050年までに世界では現在の原子力設備容量3億9,600万kWが10億kWに拡大するとの予測結果に言及しており、その意味で南アは正しい道を進んでいると指摘。実際に、アラブ首長国連邦(UAE)やベラルーシが原子力導入計画を推進中であるほか、ベトナムやポーランド、トルコ、バングラデシュ、ヨルダン、サウジアラビア、ナイジェリアなども原子力開発利用戦略を進め始めている事実に触れた。南アの原子力発電シェアは現在4%ほどであるものの、COP21で合意されたCO2の排出抑制目標の達成に向けたエネルギー・ミックスの多様化や、低価格な発電とそれによる経済成長の促進などを目的に、原子力発電所の新設を進めていると説明。2030年までに960万kWの設備増強という目標を達成するため、政府がエネルギー省を調達機関に任命したほか、ESKOMは新設発電所の所有者兼運転者になる予定だとした。ESKOMはまた、新しい原子力発電所が建設されるまでの準備として、100名の技術者やエンジニアを運転員として訓練するプログラムを、今年6月にクバーグ原子力発電所で開始している。運転員1名を育てるのに平均6年かかるとした上で、原子力工学の博士号取得者を毎年3~5名、候補として入社させることを確約。この分野で世界レベルの能力を国内で開発していくとともに、知識を深めたいとの抱負を述べている。