テレストリアル社:開発中の溶融塩炉で米政府の融資保証申請へ

2016年9月15日

 カナダを本拠地とするテレストリアル・エナジー社の米国支社は9月13日、独自開発中の一体型溶融塩炉(IMSR)について、米エネルギー省(DOE)から米国政府の融資保証プログラムに申請するよう招聘されたと発表した。同社はまずカナダで最初の商業用実証炉を建設した後、2020年代にも北米その他の産業市場で幅広くIMSRを売り込んでいく方針を公表していたが、米国支社は同国内ですでに、アイダホ国立研究所を始めとする複数のサイトを最初のIMSR商業炉の建設候補地として特定済み。先進的な原子力プロジェクトを対象とするDOEの2回目の融資保証招聘プログラムから、米国における許認可手続と建設の支援用として8億~12億ドルの保証適用を受け、電気出力19万kWのIMSR商業炉建設プロジェクトを同国で進めたいとしている。

 DOEは「2005年エネルギー政策法」に基づき、温室効果ガスの排出抑制に役立つ革新的なエネルギー技術の開発奨励策の一環として、プロジェクトの全コストの最大80%まで保証するという融資保証プログラムの招請書を2008年に出状。その際、185億ドルが原子力発電枠として割り当てられており、ジョージア州で現在建設中のボーグル原子力発電所3、4号機計画に対して、83億ドルの保証適用が2010年に約束された。2014年になるとDOEは、新たに125億ドル分の融資保証プログラムを公表。受動的安全系やモジュラー工法など革新的な設計改善が行われた「先進的原子炉」や、出力30万kW以下の革新的「小型モジュール炉(SMR)」、既存施設の出力増強と改修--などに適用範囲を広げて申請を募集した。テレストリアル社の今回の発表によると、DOEは1回目の招聘時に同社が提出した申請書を評価し、今年10月と11月に締め切り日を設けた2回目のプログラムに招聘したもの。これにともない、テレストリアル社は現在、申請書の提出計画を進めている。

 溶融塩炉は燃料として、溶融塩にトリウムなどを混合した液体を使用する。「第4世代原子力システムに関する国際フォーラム(GIF)」では国際共同研究開発が可能な6つの原子炉概念の1つに選定されており、米国のトランスアトミック・パワー社なども開発中。テレストリアル社のIMSRは出力2.9万kW~29万kWまで3種類のSMRになる予定で、同社によれば安全かつ信頼性のある発電ソリューションになるとともに、600度Cのプロセス熱を供給することもできるという。同社はまた、IMSRには一次エネルギー供給システムを迅速に低炭素化する能力があり、米国の産業競争力を強化する上では不可欠だと強調した。カナダではすでに今年2月、同国における技術的な規制要件の遵守状況を確認するため、認可前設計審査の第一段階をカナダ原子力安全委員会に申請済みとなっている。