ロシア:IAEA総会に合わせて複数加盟国と政府間合意文書 締結

2016年9月28日

 国際原子力機関(IAEA)の第60回総会が9月26日~30日までウィーンで開催されているのに合わせ、ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は複数の加盟国政府と精力的に原子力関係の合意文書を締結している。フィンランドとこれまでの協力活動に関連する実務的な合意文書を、ヨルダンとは受注した原子力発電所建設計画に関するものを結んだ。また、キューバと締結したのは放射線技術の民生利用に重点を置いた協力合意であるが、チュニジアとは将来的な原子力発電所の建設協力を視野に入れた政府間合意となっている。

 ロシアと国境の一部を接するフィンランドでは、ロシア型PWR(VVER)が2基稼働するなど原子力平和利用における協力関係は古く、フィンランド中西部でハンヒキビ原子力発電所(120万kWのPWR)建設計画を進めるフェンノボイマ社は2013年末、ロスアトム社の子会社と原子炉供給契約を締結した。今回ロスアトム社は、「原子力事故の早期通報に関する条約」と原子力施設情報の交換について、両国政府が1995年に結んだ協定を実行に移す対策関連の議定書を、27日付けでフィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)と調印した。同議定書でカバーされる施設は、フィンランド国内およびロシア国内の国境近隣地域300km圏内に立地する、あるいは建設中の原子力発電所と研究炉、新燃料と使用済燃料の貯蔵施設、その他の関連施設となっている。同議定書はまた、原子力と放射線安全の様々な側面で情報交換する際の手段も明記。ロスアトム社とSTUK間で定期的に合同訓練やコンサルティングを実施することを想定している。

 ヨルダンと27日に結んだ合意文書は、原子力とその関連分野における人的資源の教育・訓練に関する覚書で、ロスアトム社のS.キリエンコ総裁とヨルダン原子力委員会のK.トゥカン委員長が調印した。ヨルダン政府は同国初の原子力発電所となる100万kW級原子炉2基を首都アンマンの東85km地点に建設するため、2013年にロスアトム社を選定。100億ドルといわれる建設費の49%は同社が出資を約束している。今回の覚書は、ヨルダンの原子力発電プログラム実現に向けた人材育成の協力枠組となるもので、同国が必要とする部分に特に焦点を当てた教育・訓練プランの枠内で協力を想定。具体的には、原子力関連学科の大学生や大学院生、博士号取得者、学会関係者を対象とした共同プログラムや、研修、サマー・スクールが含まれるとしている。

 中米のキューバと北アフリカのチュニジアでは今のところ商業炉は稼働しておらず、具体的な導入計画も浮上していないが、ロスアトム社のキリエンコ総裁は今回、27日にキューバ科学技術環境省のJ.サンタナ副大臣と、26日にはチュニジア高等教育・科学研究技術省のS.カルバウス大臣と原子力平和利用分野の政府間協力協定に調印した。キューバに対しては、核医学と放射線技術、原子力関係の専門家訓練、基盤研究と応用研究、放射性廃棄物と使用済み密封放射線源の管理--といった幅広い分野で支援を提供する。一方、チュニジアに対しては、国際的な勧告に沿った原子力インフラの開発・整備で支援協力を行う方針。具体的な項目としては、発電炉と研究炉、脱塩プラント、粒子加速器の設計・建設、ウランの探査と採掘、チュニジアにおける原子力産業の発展を目的とした鉱物資源研究、発電炉と研究炉に対する核燃料サイクル・サービス、放射性廃棄物管理、放射性同位体生産とその工業・医学・農業利用、原子力と放射線安全、原子力専門家の教育・訓練--を挙げた。どちらの国に対しても協力の方法はほぼ同じで、ロスアトム社は実施活動の調整や課題処理を担当する委員会を設置する。また、個別のプロジェクトや科学研究、共同実験の実施、セミナーやシンポジウムの開催、科学技術分野の人材育成、科学・研究情報の交換などについては共同作業チームを編成するとしている。