IAEA総会のサイド・イベント:「原子力分野の女性進出には教育や支援が重要」
国際原子力機関(IAEA)が現在ウィーンで開催中の年次総会のサイド・イベントとして、原子力分野における女性の進出問題を扱う会議が27日に開催された。同分野の科学者やエンジニア、管理者として女性の果たす役割が重要度を増している一方、女性が男性と同程度に代表的な立場に立つには未だ前途遼遠という認識から、今年で4回目となるイベント「Women in All Things Nuclear」では、加盟国のIAEA代表部の女性大使や政府代表、IAEAの女性高官らが現状の課題や可能性のある解決策について討論。女性に教育や支援、指導的立場を与えることの重要性が指摘されたほか、天野之弥事務局長は「IAEAでも仕事のあらゆるレベルで女性が非常に貢献しており、バランスの取れた多様な労働力は我々のプログラムを大きな成功に導く」との見解を表明した(=写真)。今回のパネル討論では、ウィーン軍縮不拡散センターのラウラ・ロックウッド代表がモデレータを務めた。「現状を変える実用的なアイデア」という論点については、ローラ・ホルゲート米国政府代表が「イベント開催時に女性の登壇者を増やすよう、大使その他の重要スピーカーが事務方に申し入れること」を提案。国連やその他の外交ミッション、民間グループにおいても男女比の不均衡を是正するための、新たな慣習を形成することが可能だと述べた。
また、科学、技術、エンジニアリング、数学の分野で女性のリーダー世代を確実に育成するには、教育が重要との認識でパネリスト達は合意。メキシコ政府のアリシア・マシュー大使は、「教育こそが多くの女性を科学や技術の道に進ませる唯一の方策であり、現状から転換する最良のツールになる」と指摘した。この関連でフィリピン政府のマリア・コリンソン代表は、IAEAと各国の教育専門家が最近アジアの4か国で試験的に実施している教育プロジェクトに言及。教育システムに原子力科学を導入するためのユニークな教育戦略や教材を英国や米国、日本、韓国などから収集し、ガイドブックとして取りまとめていることを紹介した。IAEAのファン・カルロス・レンティッホ原子力安全・セキュリティ局担当事務次長も、IAEAおよび原子力分野の他の機関で女性を登用した自らの経験を披露。「IAEAや原子力産業の意思決定者が若い女性の優れた才能を育てていけるよう取り組まねばならない」とコメントした。
ノルウェーのベンテ・エンジェル=ハンセン在オーストリア大使は、指導的立場にある女性が果たすべき特別な役割を強調。質の良い指導力を発揮して信頼や透明性を保証し、組織の全レベルにそうした価値を反映させねばならないとした。カナダ天然資源省のキム・ラッド政務官も、カナダがどのようにして男女比が同等な内閣を発足させたかを説明。今や女性リーダーはこれまで以上に求められているとした上で、世界中の頭脳の半分を無視すれば、地球温暖化や低炭素経済への移行といった試練に打ち勝つことはできないと訴えた。
こうした議論についてIAEAのジャニス・ダン・リー管理局担当事務次長は、「意欲や感動がもたらされる内容だった」と総括。原子力コミュニティで女性の才能が確実に認められるよう、今後のことを考えていく示唆が得られたと締めくくった。