ロシア:海上浮揚式原子力発電所の係留予定地で陸上設備の建設開始

2016年10月5日

©ロスエネルゴアトム社

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 ロシアで民生用原子力発電所の運転を管轄するロスエネルゴアトム社は10月4日、極東地域北東端に位置するチュクチ自治管区のペベクで、世界初の海上浮揚式原子力発電所(FNPP)(出力7万kW)となる「アカデミック・ロモノソフ」の係留用陸上設備など、港湾インフラの建設工事を開始したと発表した(=写真)。ペベク市内の港湾および給水設備の建設サイトでは2015年9月から準備活動が行われており、建設資機材やパイル、建物建築用機材などの搬入は9月までに概ね完了。同社は現在、エネルギー省や地元の電力エンジニアリング公社、および東部電力系統社などと、FNPPから配電する技術的な条件の設定も進めている。11月までにこれらの作業を完了した後、12月にはFNPPの運転開始関係文書を提出する準備と、現地に設置する電気技術機器の発注などを予定。近隣地区のビリビノ原子力発電所(1.2万kWのLWGR×4基)をリプレースする形で2019年にFNPPが運転を開始すれば、世界最北端に立地する世界初の海上浮揚式原子力発電所になると強調している。

 FNPPは出力3.5万kWの舶用原子炉「KLT-40S」を2基搭載するバージ型(タグボートで曳航・係留)原子力発電所。ロシアの極北や極東地域など、燃料資源が乏しく輸送も困難な場所での利用に適しているほか、大型河川の河床にも係留できるため、アジア太平洋地域の島国での需要も見込んでいる。ロスエネルゴアトム社は当初、最初のFNPPはカムチャツカ半島のビルチンスクに係留し、北側に隣接するチュクチ自治管区のペベクには2番目のFNPPを予定していた。しかし、1970年代に運転開始したビリビノ発電所で経年化が進んでいるという事情もあり、同発電所1号機の閉鎖時期に合わせてペベクで優先的に係留することとした。同社は今年7月からサンクトペテルブルクでFNPP発電部分の係留試験を実施しており、機器・システムが設計通りに機能するかを確認中。これを2017年後半までに完了した後、発電所全体として完成させ、北極海経由でペベクまで曳航する。2019年9月にはペベクの設計地点で据付を行い、試運転を開始する計画だ。

 10月4日に開催された港湾インフラの起工式では、最初の鋼製板状パイルを基礎部分に据え付けるとともに、記念パネルとタイムカプセルも設置。チュクチ自治管区のR.コピン知事やロスエネルゴアトム社のP.イパトフ副CEO、FNPP建設行政本部長などが出席した。コピン知事は同地区が抱える課題として、同一発電管内にあるビリビノ発電所で閉鎖時期が近づいていることと、金鉱採掘企業など地区内の大規模資源採掘業者に対する十分な電力供給を列挙。地元産業に開発意欲を与えるという観点から、FNPPはペベクのみならず自治管区全体にとって非常に重要であり、その運転開始に期待を掛けていると述べた。