ポーランド:「HTRは有望な熱電併給源」、研究炉を2025年までに建設へ
ポーランドは現在、国内の2サイトで合計600万kWの原子力発電設備建設を計画中だが、これと並行して高温ガス炉(HTR)を導入する実行可能性調査(FS)を担当している政府の諮問委員会は10月10日、「HTRによる熱電のコジェネレーションは商業的に有望」との見解を表明した。FSを主導する国立原子力研究センター(NCBJ)のG.ウロフナ教授は、熱出力1万kW、電気出力0.4万kWの研究用HTRを2025年までに完成させるため、今年5月にURENCO社やAMEC社が参加する英国の企業連合と基本合意書に調印したと発言。その他の英国企業やフランス政府関係機関も関心を示しているほか、英米両国政府とは最近、関連協議を実施したことを明らかにした。
この見解は、欧州原子力学会が今月9日~13日までポーランドの首都ワルシャワで開催している「欧州原子力会議」の席上で発表されたもの。今回の会合はNCBJが共催機関に加わっており、参加者は会議後、シフィエルクにあるNCBJで1970年代に運転開始した同国唯一の研究炉「マリア炉(熱出力3万kW)」を視察予定となっている。ウロフナ教授によると、原子力はポーランドの経済成長を促す原動力となる可能性があり、HTR技術を原子力導入プログラムに含めることは、ポーランドがこの分野で成功を納める重要ファクターの1つになる。諮問委員会所属の専門家も、「化学産業などが必要とする熱の供給源として利用すれば天然ガスの輸入量を大幅に削減できる」という点で合意。ただし、1基あたりの発電量は比較的少ないため、原子力導入プログラムにおける第一目標の達成には適さないとの認識である。
ポーランドでは昨年10月に保守派の「法と正義」党による新政権が発足。経済省に代わってエネルギー省が原子力導入プログラムを担当している。同省のK.トゥホジェフスキ大臣は今年7月、HTRの開発条件について分析や準備を行う諮問委員会を正式に設置。ポーランドを最も進んだ原子力技術の利用国とするため、NCBJの専門家や大手エンジニアリング企業の代表を委員に任命し、第4世代の技術であるHTRの利用可能性を集中的に評価する作業を開始していた。HTRが供給する摂氏500度~1000度の熱は水素製造や石炭のガス化といった化学反応用に利用できるほか、そうしたプラントの隣接区域で安全に運転できるため、輸送ロスを最小限に抑えられると同委は評価。国家や企業の科学技術事業でHTRを最も効果的に活用し、熱生産や分配の潜在的な市場を分析するための勧告をまとめ、ロードマップも策定することになっている。