WH社:英国でのSMR開発コストとリードタイム削減で設計効率化調査

2016年10月13日

 東芝傘下のウェスチングハウス(WH)社は10月12日、英国で同社製小型モジュール炉(SMR)を建設する場合のコストとリードタイムの大幅な削減を図るため、英国政府の「先進原子力機器製造研究センター(N-AMRC)」と協力して新たな先進的製造調査を実施すると発表した。同社は今年4月、SMRの原子炉容器(RPV)を英国で製造する能力について、N-AMRCと実施していた最初の先進的製造研究調査を完了。原子力市場が今後、大幅に拡大すると同社が見込む英国において、RPVを効率的に製造できる可能性があると結論付けていた。N-AMRCと協力する2度目の調査になる今回の設計効率化調査で、WH社は英国のキャメル・レイアード造船所とも連携する計画。同造船所が大型で複雑なモジュール機器の設計・製造や組立、輸送等で40年以上のキャリアを持つことから、同造船所からモジュール工法の専門家を招き、モジュールの組立技術を通じて生産効率の上がる設計を追求することになる。

 N-AMRCは英国政府が2009年、低炭素産業戦略に基づいて設立を決めた原子力機器専門の製造研究所で、政府が1,500万ポンド(約19億円)を出資したほか、地元ヨークシャー地方の開発公社が700万ポンド(約8億8,000万円)を出資。原子力大型機器の製造能力といったサプライヤーの技術力や技術者資源を強化するため、地元の2大学にロールス・ロイス社をリーダーとする約30社のサプライヤー連合を加えて、2012年に正式発足させた。WH社はフランスのアレバ社やインドのタタ・スチール社などとともに、N-AMRCの創設に協力していた。

 英国政府は2015年の予算編成方針の中で、革新的な原子力技術開発で英国が世界のリーダー的立場を確保することが可能になる意欲的な研究開発プログラムに2億5,000万ポンド(約316億円)を拠出すると表明。これには英国にとって最適な価値を有するSMR設計の特定コンペも含まれており、今年3月にエネルギー気候変動省(7月に「ビジネス・エネルギー・産業戦略省」に統合)は同コンペの第一段階として、SMRの商業化と建設、開発資金調達に関わる技術開発者や電気事業者、潜在的な投資家から関心表明(EOI)を募ると発表した。これと並行してSMRの開発ロードマップも作成する方針で、開発根拠に関するこれまでの情報を総括するとともに開発政策の枠組を打ち出し、英国がSMRで経済的利益を得ながらエネルギー政策上の目的を果たせるような方向性を盛りこむ考え。また、適切な立地点あるいは立地点のタイプを特定するプロセスの詳細も含めるとしている。

 現地の報道によると、これまでに35件以上のEOIがWH社やロールス・ロイス社、GE日立ニュークリア・エナジー社、ニュースケール社などから寄せられた模様。政府は現在、SMRの商業化見通しや開発期間などについて、適格基準のチェックリストに照らし合わせた協議をこれらの企業と行っている。また、このSMR特定コンペはまもなく次の段階に移行すると見られている。