米国:20年ぶりの新設炉ワッツバー2が営業運転開始

2016年10月20日

©TVA

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 米国のテネシー峡谷開発公社(TVA)は10月19日、テネシー州東部のワッツバー原子力発電所(=写真)で、米国では20年ぶりとなる2号機(PWR、120万kW)が営業運転を開始したと発表した。1996年に隣接区域で同1号機(PWR、123万kW)が営業運転を開始して以来の新設炉であり、米国における100基目の商業炉となった。

 TVAは1973年、当時の古い許認可システムに従ってワッツバー1、2号機の建設許可を取得。1号機が運転開始にこぎ着けた一方、2号機の建設工事はTMI事故後の安全要件追加や電力需要の低下などから1985年に停止された。TVAは2007年になって、約25億ドルの予算で同炉の完成計画を決定し、2008年1月に工事を再開。米原子力規制委員会(NRC)は2015年10月、同炉は事故時の影響緩和策や使用済燃料貯蔵プールの計装強化など、福島第一事故関連の指令に適合するとして運転許可を発給した。初臨界を達成したのは今年5月のことで、6月3日付けで送電を開始したものの、その2日後にタービン系の不具合で自動停止。8月には主要変圧器で発生した小規模火災の修理に約1か月を費やすなど多少の遅延はあったが、今回、広範な出力上昇試験をすべて完了するとともに定格出力で3週間以上連続運転するなど、信頼性が確認されたとしている。

 最終的な建設コストは47億ドルに達したが、営業運転の開始により同炉は晴れて、TVAの資本的資産から営業資産に移行。セコヤー(120万kW級PWR×2基)およびブラウンズフェリー(110万kW級BWR×3基)の両原子力発電所と並んで、TVAが保有・運転する原子力設備の1つとなり、試運転中に発電した5億kWhのクリーン電力は既存の6基とともに、TVAが排出するCO2の削減に貢献した。TVAのJ.グリムズ発電担当副総裁は「1日24時間、週に7日間、炭素を出さないエネルギーをフルに供給できる電源は原子力だけだ」とコメント。TVAがテネシー峡谷で運転する原子炉や、全米で稼働するその他の原子力発電所は、米国における将来のクリーン・エネルギー社会にとって不可欠な投資の象徴だと強調した。

ボーグル増設計画で運転員訓練生が初期試験をパス
 米国ではこのほか、建設・運転一括認可(COL)を必要とする新しい許認可システムの下で、ウェスチングハウス社製の第3世代設計である「AP1000」が4基、2013年から建設中。ジョージア州のボーグル3、4号機増設計画ではプラント所有者であるジョージア・パワー社が10月17日、両発電所の運転員および上級運転員となる最初の訓練生グループがNRCの定める初期認可試験をパスしたと発表した。3、4号機の運転は、同社と同じくサザン社の子会社であるサザン・ニュークリア・オペレーティング社が担当する予定だが、雇用する800余名の正規従業員のうち、約75名は高度な訓練を受けた運転員とする方針。認可試験は燃料の初装荷と起動に先立ち、認可を受けた有能な運転員が確保されるようNRCが義務付けているもので、3週間の試験プロセスにはシミュレーターによる運転試験や筆記試験も含まれる。また、初期試験をパスした訓練クラス生は、今後6か月にわたって運転開始前試験を受けねばならないとしている。