英国:送配電会社がムーアサイド原子力発電所の送電線建設へ

2016年10月28日

 英国のイングランドとウェールズ地方全域で送配電網を運営しているナショナル・グリッド社は10月24日、カンブリア西部のセラフィールド近郊でNuGen社が計画しているムーアサイド原子力発電所を国内送電網に接続する全長約164kmの送電線建設プロジェクトの詳細を公表した。2020年代半ばまでにウェスチングハウス社製AP1000を3基(合計360万kW)建設するというムーアサイド計画は、この夏に2回目の公開協議が終了した段階にあり、東芝を筆頭株主とするNuGen社は2018年にサイト許可の取得を目指している。セラフィールド地区の既存の低圧系統では、ムーアサイド発電所規模の設備からの送電に耐えられないことから、ナショナル・グリッド社は同発電所の完成を見越し、高圧の送電線を新たに建設するとともにその周辺環境への影響を軽減するという28億ポンド(約3,586億円)のプロジェクトについて、10月28日から来年1月6日まで公開協議を実施する。2017年に環境省の付属機関である計画審査庁に建設申請書を提出し、同意が得られればビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)大臣からも承認を得る考え。許可の取得とともに2019年から建設工事を開始し、2024年までに第一段階の送電線を完成させたいとしている。

ナショナル・グリッド社の既存送電網

ナショナル・グリッド社の既存送電網

 新しい送電線は2方向のルートで構成されており、1つは海岸に面したセラフィールド北西部のムーアサイド発電所から北上し、カーライル近郊のハーカーにある既存の変電所に結ぶルート。もう1つは、発電所を南下してファーネス半島およびモーカム湾を経由し、ヘイシャムの既存変電所を結ぶルートになる。北西海岸を取り囲む「パワー・リング」を形成することで、同発電所をカンブリア西部の送電網に確実に接続することが出来るとした。ナショナル・グリッド社は昨年6月にこれらの新ルートについて公表して以来、地元の当局者や主要団体に対して送電線の建設技術や敷設場所の正確な位置などを説明。ルート沿線の土地所有者などともコンタクトを取っているほか、現在はいくつかの地点で情報収集などの調査を進めている。

 ナショナル・グリッド社はまた、セラフィールドが風光明媚な保養地として知られる湖水地方国立公園の西端に位置することから、送電線が景観に及ぼす影響が軽減されるよう広範な対策を提案した。公園の西側全域で新しい送電線の23.4km分を地中化するほか、既存の送電線も完全に取り払うことを検討。この50年で初めて、同地域から送電鉄塔が消えることになるとした。これに加えて、公園の南側でも12億ポンド(約1,537億円)をかけて、ケーブルをモーカム湾底部の長さ22kmのトンネルに通す計画。これにより、既存の低圧系統用鉄塔の数は大幅に削減され、少数の高圧系統用鉄塔に取り替えられると強調している。