英政府:原子力関係の技術革新プログラムに2,000万ポンド拠出

2016年11月7日

 英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は11月3日、民生用原子力部門における技術革新を支援するため、主要5分野合計で2018年までに2,000万ポンド(約26億円)以上を拠出すると発表した。英国では現在、約20年ぶりという原子力発電所新設計画が複数、進展中であるほか、政府は2030年までに小型モジュール炉(SMR)初号機の運転を開始するという目標達成のため、英国にとって最良の価値を有するSMR設計の特定コンペにも今年3月から着手した。こうした政策を支える先進的原子燃料や次世代原子炉設計等の開発を加速し、原子力分野の専門的知見を英国で蓄積。革新的技術の開発で世界のリーダー的立場に復帰することを目指している。

 今回の政策は、政府が1年前に「2015年の歳出見直しと秋季声明」で盛りこんだ意欲的な原子力研究開発プログラムへの投資実施という誓約の一部。革新的なエネルギー技術開発への支出を倍増し、2021年まで毎年4億ポンド(約519億円)以上投資していくとした。民生用原子力部門に対する今年から2018年までの拠出は、原子力技術革新研究諮問委員会(NIRAB)が打ち出した勧告に基づいており、5つの分野それぞれについて適用希望者のために申請期間を設ける方針。まず、先進的な原子燃料開発を目的とした最先端の作業継続に600万ポンド(約7億7,900万円)を充てるほか、安全性や効率性が改善された次世代原子炉設計の開発には500万ポンド(約6億4,900万円)を支援する。将来的にモジュール式原子炉を建設する能力や先進的な製造能力の開発にも500万ポンドを調達するとしており、革新的な産業の構築を目的とした政府の投資支援機関「イノベイトUK」が小規模事業研究イニシアチブを通じて申請の募集や割当を担当する。また、燃料のリサイクル研究に200万ポンド(約2億5,900万円)を充当し、将来的に環境面や財政面の負担軽減が可能なリサイクル・プロセスの開発を促進。さらに、原子力部門で2050年まで将来的な意思決定を行う際に必要となる政府の知識基盤を拡充するため、一連のツール・キット開発やデータ実証の継続にも200万ポンドを充てることになる。

 BEISはこのほか、核融合技術について無尽蔵のクリーン・エネルギー供給が期待出来る有望な研究分野との認識を示しており、国際熱核融合実験炉(ITER)や欧州共同トーラス(JET)計画など国際的な研究開発プログラムへの拠出や国内の研究プログラムへの資金提供を続けると強調。英国原子力公社(UKAEA)がプログラム管理を行う一方、資金提供は工学・物理科学研究評議会が管理するとしている。