米原子力産業界、トランプ氏の大統領当選を祝福

2016年11月11日

 米原子力エネルギー協会(NEI)のM.コースニック次期理事長兼CEOは11月9日、原子力産業界を代表して次期大統領に決定した共和党のD.トランプ氏とM.ペンス次期副大統領を祝福するとの声明を発表した。エネルギー政策が大きな争点とならなかった今回の大統領選挙で、トランプ氏は原子力政策にあまり触れておらず、国内および対外的な原子力プログラムについて連邦政府の具体的施策が示されるのはもう少し先のことになる模様。それでも、同氏が国内石炭産業の復活や石油・天然ガス資源の活用拡大に加えて、原子力発電の必要性も明確に主張していた点にNEIは注目しており、原子力技術で米国が世界のリーダー的立場を維持するとともに、重要なエネルギー・インフラや環境保全の問題解決には原子力が不可欠であるという面からも、次期大統領が継続して原子力を支援していくよう働きかけたいとしている。米国では、民主党政権が過去に「国際核燃料サイクル評価」を発案したほか、ユッカマウンテン深地層処分場計画を打ち切るなどの原子力政策を取る一方、共和党は概して原子力推進派であることから、自由化された電力市場における既存原子力発電所への優遇措置といった改善で、トランプ氏率いる共和党政権への期待があると見られている。

 コースニック次期理事長はまず、トランプ氏が原子力発電所を新たに建設する必要性と米国のエネルギー供給全体の拡大を訴えていたとし、「成功した不動産業者である彼は、莫大な利益を得るための経済成長基盤として信頼性の高い電源が早急に必要であることを理解している」と指摘した。停滞した経済とは裏腹に、米エネルギー省(DOE)は電力需要が2040年までに23%増加すると予測しており、これには200基以上の大型原子炉が必要になるとの認識を次期理事長は明示。この予測と、利用できるエネルギーすべてを活用するというトランプ氏のアプローチを結びつければ、原子力施設が供給する低炭素で信頼性のある電力を米国のエネルギー・ミックスにおける主要部分とし続けねばならないことは明らかだとした。次期理事長はまた、選挙戦期間中を通じて原子力の重要性は超党派で認識されており、両候補の間で一般的見解が一致していた数少ない分野の1つだと明言。一般市民の意識調査でも、回答者は米国のエネルギー・ミックスの中でも原子力は重要という傾向であり、各人が支持する候補者とは無関係だったと指摘した。

 なお、トランプ氏は選挙戦における政策方針書の中で「アメリカ第一主義のエネルギー計画」を訴え、米国は原子力発電などのエネルギー技術で世界のリーダー的存在であると明記。同計画により、エネルギー自給を達成するとともに数百万の雇用を創出し、クリーンな大気と水を保全すると公約していたが、今年5月にノースダコタ州で行った演説では、2020年以降の新たな温暖化対策である「パリ協定」をキャンセルすると断言した。オバマ政権が批准した同協定は今月4日に発効済みで、通常の手続ではトランプ氏の任期期間中に脱退できないことになっている。しかし、一部の法律専門家は、合法的近道を使って1年以内の脱退が可能という認識を示した模様で、同協定および地球温暖化問題を巡って巻き起こる国際論争の行方が注目されている。