米国:未完の原子力発電所を落札した企業が完成計画 提案
米アラバマ州で一部完成していたベルフォンテ原子力発電所の売却オークションを実施したテネシー峡谷開発公社(TVA)は11月14日、同発電所と敷地および付属インフラ設備を1億1,100万ドルでニュークリア・デベロップメント社に売却することが決定したと発表した。両者はすでに同日付で売買契約書に調印済み。落札企業のニュークリア・デベロップメント社はワシントンDCを本拠地とする投資グループで、進捗率がそれぞれ90%と58%の1、2号機(バブコック&ウィルコックス社製PWR)を完成させると提案している。米国では近年、低価格なシェール・ガスに押されて複数の原子力発電所新設計画が頓挫しているが、長期的視点からはCO2を出さない原子力の特長が有効との評価があったと見られている。
TVAは1980年代に工事が中断した同発電所の2基のうち、1号機の建設再開を2011年に決定したものの、同様に建設を再開していたワッツバー2号機を優先的に完成させるため、人的および財政的資源を投入。ワッツバー2号機が10月に米国で20年ぶりという新規の営業運転開始原子炉となった一方、ベルフォンテ原子力発電所については今年5月、統合資源計画で「今後少なくとも20年間は新たな大規模ベースロード電源は不要」との見通しが示されたとし、インフラ設備ごと公開オークションにかける方針を表明していた。
売却対象は1,400エーカー(約5.67平方km)の敷地と1、2号機のほかに冷却塔、使用済燃料貯蔵プールなどの関連施設、高低2系統の開閉所、事務棟、倉庫、訓練センター、駐車場、鉄道の支線、ヘリコプターの離着陸場などで、TVAは最低入札価格として当初に査定した3,640万ドルを設定。6か月のオークション期間中、11社が関心表明を行った上で交渉継続のための機密保持契約を締結したが、最終的に財務能力証明書と同発電所の利用計画を含めた関心表明書一式を作成したのは3社だったという。この売買取引の一環として、TVAは契約額の1億1,100万ドルとは別に、手続完了後の5年間に同発電所で最低2,500万ドルの投資を行うようニュークリア・デベロップメント社に要求。この投資により、地元ジャクソン郡の経済開発活動を促進するとした。また、売買取引の手続がすべて完了するまで最長2年かかることから、それまではTVAが同発電所を継続して所有するとしている。
現地の報道によると、ニュークリア・デベロップメント社を経営するテネシー州出身の土地開発実業家F.ヘイニー氏は、ベルフォンテ原子力発電所の2基を完成させるために追加で130億ドルの建設費を投資すると述べた模様。来年にも作業を開始したいとしており、建設期間中には3,000~4,000人分の雇用創出が見込まれるとした。また、同発電所では最新の安全システムやデジタル式計測制御(I&C)系などの最先端の技術を適用するほか、運転員の訓練用に中央制御室のシミュレーターも装備する方針だとコメント。「将来的には、原子力のような無炭素電源が必要になると確信する」と述べたことが伝えられている。