米イリノイ州でゼロ炭素クレジット含むエネルギー法案 表決へ
米イリノイ州の6サイトで原子力発電所を所有・運転するエクセロン社は11月15日、経済性の悪化により早期閉鎖のリスクにさらされている原子力発電所にゼロ炭素クレジットの形で財政支援を与える法案が同州議会の下院本会議で表決されることになったとし、これを歓迎する見解を表明した。同社は今年6月、低価格な天然ガスと構造的欠陥のある電力市場により収益が大幅に悪化したとして、州内のクリントンおよびクアド・シティーズの両原子力発電所をそれぞれ、2017年6月と2018年6月に早期閉鎖する方針を公表。その際、CO2を出さないという原子力の恩恵に適切な見返りを与える法案の成立見通しが州議会で立たないことを理由に挙げていた。同社はその後、早期閉鎖判断を覆すことが出来る最終的な締め切り日は12月になると述べた模様だが、今期の州議会は12月1日に閉会予定。11月中は祝日による休会期間が入るため票決日程はまだ決まっておらず、可決成立に至るかは微妙な情勢だ。
エクセロン社の発表によると、「将来的なエネルギー雇用に関する法案」と題する今回の法案は、イリノイ州で緊急に必要とされている包括的エネルギー法案の成立に向けた重要なステップであり、主な特長は「CO2のゼロ排出基準(ZES)」が設定されていること。ニューヨーク州では今年8月、CO2を出さない発電設備に対する財政支援プログラム「ゼロ排出クレジット(ZEC)」を盛りこんだ温暖化防止政策を承認したが、イリノイ州のZESもZECと同様、原子力発電所に対して発電量に応じた支払がクレジット取引を通じて行われると見られている。エクセロン社は、同法が成立すればリスク下にある原子力発電所を温存できるため、関連する4,200人分の雇用が保持されるほか、年間12億ドル相当の経済活動が維持されると説明。傘下の電力会社であるコモンウェルス・エジソン社の担当地域では、平均的な光熱費が月額25セント上昇することになるが、法案が成立しなかった場合は原子力発電所の閉鎖により1.85ドル上昇する可能性があるとした。また、ZESを導入することで、イリノイ州は州内の無炭素エネルギーの90%以上を供給する原子力発電の環境上の利点を全面的に認めた州の1つになると強調。今後数日間に多少の修正があると予想されるものの、同法はイリノイ州の顧客に多大な恩恵をもたらすことになるとしている。