スイスAXPO社:ベツナウ1号機のRV母材に関するセーフティケース 提出
スイスでベツナウ原子力発電所を運転するAXPO社は11月16日、1号機(38万kWのPWR)の原子炉容器(RV)母材について安全性を保証するセーフティケースを14日付けでスイス連邦原子力安全検査局(ENSI)に提出したと発表した。同炉では2015年初夏の定検時にRVで超音波探傷検査を実施した際、製造過程における僅かな異常としてヒビの兆候が検出されたため、AXPO社はENSIが承認済みの作業手順証明書(ロードマップ)に沿って、詳細な物質特性評価検査を実施していた。ENSIは今後、世界的に著名な専門家で構成される小委員会の助言を受けつつ同文書を審査し、同炉を再稼働させるべきか判断する方針。AXPO社としては、今年末までに再稼働の承認を得たい考えだ。
AXPO社は1号機RVリングの複製品を使い、過去数か月間にわたって様々な試験を実施。例として、RV母材で探知された内包物(インクルージョン)の組成分析や内包物がRVの特性に及ぼす影響調査、母材であるスチールの強度試験などを挙げた。これらの試験結果から、同社はRVの物質特性に安全上の影響が及ばないことが判明したと明言。同炉を2030年まで合計60年間運転する上で、適切な安全裕度が確認されたと結論づけている。
福島第一原子力発電所事故後、スイス連邦政府は既存の原子炉5基が約50年の運転期間を終え次第、順次閉鎖していき、2034年までに脱原子力を達成することを決定した。しかし、政府内の強硬派は最近、原子力発電所の早期閉鎖により脱原子力の達成時期を早める提案を行っており、今月27日にその是非を問う国民投票の実施が予定されている。