ベトナム国会:日露が建設を担う原子力発電所建設計画の実行中止決議を採択
ベトナムの国会は11月22日、日本とロシアへの発注を決めていた同国初の原子力発電所建設プロジェクトについて、実行中止する決議を9割以上の賛成多数で可決した。中止の理由として政府は、投資判断を下した2009年以降に同国におけるマクロ経済情勢が大きく変化したことを挙げており、日露両国の原子力技術の安全性に係わるものではない点を強調した。同プロジェクトではコストが当初予定額の2倍に拡大したとの報道があり、国内経済への影響が懸念されたと見られている。政府の発表によると、国会に中止方針を報告した時点で同国は日露両国に通達を行っており、「これまで様々に投資協力してきた上での中止は残念だ」との表明が両国からあったものの、理解が得られたと説明した。今後は、ベトナムが優先的な投資を必要とする複数の大型インフラ開発に支援協力したいとの期待が両国政府から示されたとしたほか、将来的に原子力発電所建設計画が再燃した場合は両国を主要パートナーとする考えを明らかにした。
政府スポークスマンとして記者会見を行ったマイ・ティエン・ズン官房長官(=写真)は、同国では2009年以降、節電関係の地理的バランスが変化し、近隣諸国から電力を購入する送電網が近い将来整備される見通しになったと指摘。過去5年の間に再生可能エネルギーによる発電コストも大幅に減少し、経済的に実行可能になったとした。その一方、同国は現時点で経済開発の推進力となる近代的なインフラの整備で巨額の資本投資を必要としており、具体例として南北高速道路や鉄道、ロンタイン国際空港の開発プロジェクトなどを挙げた。こうした背景から共産党中央委員会と国会、および政府が国の持続的発展を保証していくという立場から強い責任感を持って慎重に検討した結果、今回の方針を決定したと説明。これに対しては国民全体から強い支持が得られるとともに、日露両国からも十分理解されていると確信すると述べた。 原子力プロジェクトの中止にともなう国内のエネルギー供給保証問題については、同官房長官は大きな影響はないとの認識を示した。2030年までにニン・トゥアン省の2サイトで合計480万kW分の原子力発電設備が完成したとしても、発電システムにおける設備容量の貢献度は約3.6%~5.7%に過ぎず、2030年までの期間は石炭やLNG、再生可能エネルギーへの代替投資、中国やラオスからの買電で補完できる計算。また、2030年以降についても、石炭とLNGによる火力発電を一層増強するとともに、風力や太陽光といった再生可能エネルギー開発を促進、エネルギー効率化と省エネも推進することで賄っていけるとの考えを示した。