スペイン安全委:福島第一事故後の安全性向上で新たな設計改善 承認

2016年11月25日

 スペイン原子力安全委員会(CSN)は11月24日、国内の原子力発電所における福島第一原子力発電所事故後の安全性向上対策として、複数の新しい設計改善案件を承認した。1つはバンデリョスⅡ原子力発電所とアスコ原子力発電所1、2号機に設置する「緊急時管理支援センター(CAGE)」の性能検査に関するもので、これにより11月30日までに国内で稼働中の原子炉7基すべてでCAGEの整備が完了することになった。また、バンデリョスⅡ発電所の格納容器に設置するフィルター付きベント・システムの設計改善を承認するとともに、国内の緊急時計画と核物質防護計画の運用文書についても改定を承認した。

 欧州では福島第一事故後に実施したストレス・テストの結果に基づき、欧州原子力規制者グループ(ENSREG)が各国共通で実施すべきアクション計画を2012年に策定。スペインではその後CSNが、国家のアクション計画を2012年に承認し、2014年には改定を行った。この中で国内の原子力発電事業者は、過酷事故時に放射性物質の放出量を抑える機能を持ったフィルター付きベント・システムの設置と性能検査を2017年末までに終えるよう義務付けられている。同計画はまた、発電所共有の「緊急時外部支援センター(CAE)」に加えて、発電所毎に静的触媒式水素再結合装置(PAR)とCAGEの設置を要求。CAEとCAGEでは電源喪失時にも稼働可能なポータブル式の冷却システムを追加配備するなど、設計外事象や過酷事故の発生防止と万一発生した場合の緊急事態に対処する機能の増強を目的としている。

 スペイン原子力産業会議(フォロ・ニュークリア)によると、今年3月時点でスペインの原子力発電所では国家アクション計画で指示された活動の約8割を完了。残りの作業も、多くが最終段階に入っている。新たな対策やシステムの導入に際してはCSNが使用前に承認を与えており、今回の本会議でCSNは、バンデリョスⅡ発電所で既存のアナログ制御システムをデジタル式の最新システムに取り替えることも承認した。また、サラマンカ州フスバドにある燃料成形加工工場における臨界制御管理の改善、トリリョ原子力発電所にある緊急用ディーゼル発電機の防火システムでの技術的仕様の改定、アルマラス原子力発電所で過酷事故時に格納容器内の気体試料を採取する方法の改善、などの実施要請に対して好意的評価を示している。