南ア電力公社:新設候補サイトの地震リスクを指摘した報道に反論

2016年11月29日

 原子力発電所の新設計画を進めている南アフリカ電力公社(ESKOM)は11月25日、候補サイトの1つであるタイスプントでは確率論的地震ハザード解析(PSHA)を実施しており、サイトで起こり得る地震ハザードは適切に評価されているとの見解を発表した。アフリカ地球観測所ネットワーク(AEON)と地球管理科学研究所(ESSRI)が、ネルソン・マンデラ・メトロポリタン大学の調査結果に基づいて同サイトの耐震リスクを指摘し、安全ではないとの記事を同日付のビジネス雑誌に掲載したことへの反論。同社がハザード解析のデータを公表していないとの指摘に対しても、「すでに国際的な科学雑誌に掲載済みであり、インターネットで容易に入手可能だ」と主張している。

 ESKOM社は今年3月、南ア政府による原子力発電設備新設方針に沿って、東ケープ州タイスプントと西ケープ州ドイネフォンテインの2か所について、原子力施設サイト許可(NISL)を国家原子力規制局に申請。その後は、これらの申請に対するコメントを州民や自治体から募集していた。しかし、AEONの記事によると、タイスプントにはカンゴ断層が存在するほか、砂と柔らかい岩で覆われた岩盤には深い峡谷のようなものが刻まれるなど、地震リスクにさらされている。また、岩盤が海面より下に位置するため、同地の砂の下に存在する帯水層系や峡谷は洪水による大規模な津波に対処できないと指摘。福島第一原子力発電所と同じ状況になり得るとしており、同サイトで原子力発電所を建設するのは無責任だと批判している。

 これに対してESKOM社はまず、地震ハザード解析専門家委員会(SSHAC)によるレベル3の評価手順をタイスプントで特別に適用したという事実に触れた。この評価手順は、米原子力規制委員会(NRC)が新たな原子炉建設計画に対して要求する手法であり、数多くの国際的な専門家が関与した最も包括的かつ厳しいアプローチの1つだと説明。これにより、同評価ではAEON記事が言及した極端な事象の発生シナリオが考慮され、発生確率が稀な事象でもハザード計算の中に組み込まれたとした。同社はまた、カンゴ断層で1万年前に地震活動があった場所を特定し、そのリスクを定量化したのは、AEON記事が参考にした調査結果ではなくESKOM社自身だと主張。こうした作業をタイスプントの地震ハザード計算に盛り込むとともに、発電所で採用する原子炉の耐震設計にも反映させていると述べた。このように、タイスプントのPSHAプロジェクトで使用したデータ、および得られた知見は、世界の科学コミュニティにおいても十分通用するものであり、現地の地層と地震発生時のハザードを理解する上で役に立つことを確信するとしている。