米イリノイ州:エネルギー法案審議で原子力への財政支援プログラム 温存
米イリノイ州の6サイトで原子力発電所を所有・運転するエクセロン社は11月30日、州議会が審議している包括的エネルギー法案の内容について、同社および傘下の電力会社であるコモンウェルス・エジソン社は同州のB.ラウナー州知事と合意に達したと発表した。知事室からの入手情報によると、州内の住民や法人など、すべての顧客に対して電気料金の増加を抑える追加修正が同法案に加えられたとしており、同社が2017年6月と2018年6月にそれぞれ閉鎖予定のクリントン、クアド・シティーズの両原子力発電所に関しては「両発電所の雇用4,200人分を保護する重要な条項が維持された」と明言。支援期間に制限が付け加えられたものの、原子力発電所への財政支援プログラムが同法案に温存されたことを明らかにした。両原子力発電所の閉鎖判断をくつがえせる最終リミットについて、同社は12月だと述べていたが、今期の州議会は12月1日に閉会予定であるほか、上院による審議も終わっておらず、同法案が成立する見通しは不透明となっている。
イリノイ州の「将来的なエネルギー雇用に関する法案」は、主な特長としてCO2を出さない発電設備に対する財政支援プログラム「CO2のゼロ排出基準(ZES)」を盛り込んでおり、発電量に応じた補助金が原子力発電事業者に支払われると見られている。エクセロン社によると、同法案の最新版ではすべての法人顧客の電気料金上昇分を2015年実績に対して1.3%に留めるための修正が加えられ、コモンウェルス・エジソン社の住民顧客が支払う平均的な電気代の増加額は1月あたり25セント未満に制限された。また、エネルギーの効率化、および再生可能エネルギーの拡大政策についても経費の上昇分に上限が設けられており、同法案における主要な政策すべてで顧客を守るための修正が行われたと強調した。
同日付の現地報道によると、イリノイ州議会では11月29日に下院・エネルギー委員会が同法案の最新版を承認しており、ほどなく本会議での表決に移る見通し。石炭火力への支援打ち切りやエネルギー効率化政策への追加資金調達など、数多くの修正が加えられた一方、原子力発電所に対する財政支援プログラムはそのまま残されている。ただし、同プログラムで年間2億3,500万ドルの追加経費が必要になることから、実施期間は10年間に制限された模様。これにより、クリントンとクアド・シティーズの両発電所は10年間、運転を継続できるとした。これにともなう毎月最大25セントの電気料金増加に関しては、イリノイ州小売商協会やシカゴ都市圏商工会議所などの委託で行われた調査の結果から、「原子力発電所を閉鎖した場合の増加分と比べれば微々たるもの」という見解を引用。これに加えて関連する多くの雇用が失われるとともに、大気汚染が進むとの認識を伝えている。