米連邦エネ規制委:フィッツパトリック原子力発電所の売買取引を承認

2016年12月13日

 米国で州を跨いだ送電や卸電力取引などを規制・監督している連邦エネルギー規制委員会(FERC)は12月7日、エンタジー社がニューヨーク(NY)州で所有するJ.A.フィッツパトリック原子力発電所(87.9万kW、BWR)をイリノイ州のエクセロン社に売却するという取引提案について、承認する判断を下したと発表した。この取引が実行されたとしても、同発電所が立地する「ニューヨーク独立系統運用者(NYISO)」のカバー地域内で、電力市場における垂直的および水平的な競争原理に悪影響が生じることはないとの結論に基づいている。エンタジー社は2015年11月、収益の悪化した同発電所を2017年1月に早期閉鎖する方針を明らかにしたが、今年8月1日にNY州公益事業委員会は、同発電所を含む3つの原子力発電所に対する補助金プログラムを盛り込んだ包括的な温暖化防止策「クリーン・エネルギー基準(CES)」を承認。これを受けて米国最大の原子力発電事業者であるエクセロン社は同月9日、フィッツパトリック発電所の所有権と運転認可を1億1,000万ドルで購入することでエンタジー社と合意していた。NY電力庁はすでに、同発電所の廃止措置基金と関連債務の移転に同意しており、残る関門は米原子力規制委員会(NRC)による運転認可の移転承認になると見られている。

 FERCの分析調書によると、エクセロン社の系列企業はNY州内ですでに、R.E.ギネイとナインマイルポイントの両原子力発電所を含む合計約230万kWの発電設備を所有しており、フィッツパトリック発電所については、今回の売買取引の実現に先立ち燃料交換と運転継続の関連コスト等を負担するとエンタジー社に約束。同発電所の閉鎖予定日だった2017年1月に、燃料交換を行う予定になっている。

 こうした背景を踏まえた同業者間の水平競争への影響について、FERCは「今回の取引でNYISO市場の卸売価格等にエクセロン社の影響力がおよんだり、寡占化が進むことはない」と明言。エクセロン社所有の設備容量が同市場で占めるシェアは現在の3.7%から5.9%に上昇する一方、エンタジー社の同発電所・所有子会社の設備容量シェアが低下するなど、市場の集中度を測る指標(HHIインデックス)が7ポイント減になると説明した。また、発電と電力卸売、および小売りといった垂直方向の競争についても、市場に悪影響はおよばないと指摘。理由として、取引対象に送電施設が含まれておらず、対象発電所を送電グリッドに接続する個別の設備のみであること、エクセロン社および系列企業ともに新たな発電量を市場に投入する意志がないこと、などを挙げた。さらに、電気料金や規制面についても市場への悪影響はないという分析結果が出たと強調。今回提案された取引は公共の利益に即したものと認められるとの判断を明らかにした。