ヨルダン初の研究炉が完成、IAEAがピアレビュー実施
ヨルダン初の原子力設備となる多目的研究炉が、6年あまりの設計・建設期間を経て、このほど首都アンマンの北70kmに位置するヨルダン科学技術大学(JUST)敷地内で完成した。通常運転の開始に先立ち国際原子力機関(IAEA)は同炉が安全に稼働することを確認するため、ヨルダン政府の要請を受けて「研究炉の包括的原子力安全評価(INSARR)」ミッションを12月4日~8日まで現地に派遣。IAEAおよび研究炉を持つ5か国からの専門家チームが、IAEA安全基準に対する適合性についてピアレビューを実施したことを9日付けで明らかにした。同炉で6か月間実施された性能試験の結果や、運転時の安全性改善プログラムおよび有資格の運転機関設置といった運転段階への移行準備作業を審査した結果、IAEAのG.リジェットコフスキー原子力施設安全部長は、ヨルダンで原子力研究プログラムの導入計画が大幅に進展したことを称賛した。その一方で、「建設段階から運転段階への移行は簡単なことではないと認識しなくてはならない」と指摘。今後も継続的に運転機関が資格要件を満たしていると実証するとともに、適切な安全対策が講じられていると確認していく必要があるとコメントした。
「ヨルダン研究訓練炉(JRTR)」と呼称されるこの原子炉は、韓国製の新型高中性子束応用炉「HANARO」を熱出力0.5万kWにスケールダウンしたもの。同炉を建設する約1億6,000万ドルのプロジェクトは、韓国初の原子力輸出案件として2009年12月に韓国原子力研究所(KAERI)と大宇建設のコンソーシアムが獲得した。設計・建設活動は翌2010年6月に開始され、今月7日には竣工式を現地で開催。ヨルダンのアブドラⅡ世国王やヨルダン原子力委員会(JAEC)委員長をはじめ、韓国の未来創造科学部長官およびKAERIと大宇建設の幹部らが出席した。
エネルギー資源に乏しいヨルダンは、2020年代に国内の電力需要の12%を原子力で賄うため大型発電炉の導入計画も推進中。アンマンの東85kmのアムラで100万kW級のロシア型PWR(VVER)を2基建設する計画について、2015年3月にロシアと2国間協力協定を締結している。JRTRはこれらの原子炉で必要になる運転員やエンジニア、研究者の教育訓練に使われるほか、中性子を利用した基礎科学研究と新物質の開発研究、医療用・工業用の放射性同位体生産などにも活用される計画だ。