ドイツの地層処分計画について処分施設の建設運転会社が都内で講演
原子力発電環境整備機構(NUMO)は12月16日にドイツの地層処分計画に関する国際講演会を開催し、2013年の新しいサイト選定手続法に従い同国で進められている放射性廃棄物の地層処分実施に向けた取り組みと最近の状況を紹介した。NUMOはこの日、ドイツで放射性廃棄物処分施設の建設・運転を担当するDBE社と協力協定を締結。関連技術やサイト選定など、幅広い分野で情報交換や人材交流といった相互協力を進めて行くことになったことから、協定書への署名のため来日した同社のB.ラプケ社長(=写真)の厚意により、講演会開催が実現したと説明した。
まず、NUMOの近藤駿介理事長が挨拶に立ち、日本でこれまで取られてきた取り組み方法や成果について概説。処分場としての地質環境要件を満たした地点で環境調査を申し込むというアプローチでは成果が上がらず、反省と対策の検討が行われたことを明らかにした。それを踏まえ、日本の地質環境でも地層処分の適地を見いだすことができると科学的に再確認した上で、政府の基本方針として地層処分問題には現世代で取り組むべきこと、将来の世代が回収する可能性に配慮しつつ当面一つの処分場整備を目指すことなどが定められた。現在、そうした考え方を国民に絶えず発信するとともに、改めて文献調査の受入れを求めて全国各地で意見交換会などを開催していると述べた。こうした取り組みと合わせて、科学的に一層適性の高い地域を示すマップの作成も進展中で、有望地マップに含まれる自治体に対しては、処分事業の在り方や影響などについて丁寧に説明していきたいとの考えを示した。
続いてDBE社のラプケ社長が登壇し、同社が廃棄物処分事業で積み重ねてきた経験や、ドイツにおける近年の取り組み状況について次のように説明した。
ドイツでは1963年に放射性廃棄物は深地層に処分するという合意がなされ、1967年からアッセ岩塩鉱山で研究を開始。1980年代になると旧東独のモルスレーベンで低中レベル廃棄物の処分を開始(現在は廃止措置計画中)したほか、コンラッド鉄鉱山における最終処分の検討も始まった。ニーダーザクセン州ゴアレーベンでは、1979年に高レベル放射性廃棄物(HLW)の処分候補地として探査を開始したものの、2013年4月にこれまでの作業を白紙とし、連邦政府と州政府、野党などが合意ベースで改めてサイト選定を行うことが確定。同年7月になると、政府や各界の代表者33名で構成されるHLW処分委員会が安全要件やサイト選定基準に関する提案を作成し、2031年までに合意ベースで候補地を議会に勧告するという内容のサイト選定法が可決した。同委員会は今年7月に最終報告書をとりまとめており、具体的に(1)利用可能なデータの検討、(2)適合基準を定めた上で地上探査サイトを決定し探査実行、(3)適合基準を定めた上で2023年に地下探査サイトを決定し探査実行--の3段階で選定作業を進めるとしている。
サイト選定法ではまた、放射性廃棄物管理体制の再編成も規定。従来は連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)の監督の下で連邦放射線防護庁(BfS)が処分場の建設・操業に責任を負い、民間のDBE社が業務委託契約によってその事業を支援していた。しかし、2014年にBMUBの下に許認可発給・監督機能をもった連邦放射性廃棄物処分安全庁(BfE)が新たに設置されており、BfSやDBE社も2017年以降、新しい管理組織の連邦放射性廃棄物機関(BGE)として統合されることになっている。
さらに、放射性廃棄物を責任ある方式で安全に管理することを目的とした「国家計画」も、欧州委員会(EC)の指令要件に応じる形で2015年8月に連邦政府が承認した。同計画では処分対象の在庫量として、2022年の脱原子力達成時までに生じる使用済燃料(貯蔵キャスク1,100基分)と英仏での再処理から返還されるガラス固化体(291基分)、および非発熱性の低中レベル廃棄物(合計60万立方メートル)を明記しており、その管理処分コストと資金調達方法については、専門家委員会(KfK)が今年4月に勧告文を発表。中間貯蔵施設と処分場の建設・操業事業を政府に移管すべきだとする一方、これらの総経費172億ユーロ(約2兆1,100億円)と35%のリスク保険料を合計した233億ユーロ(約2兆8,600億円)は、原子力発電事業者4社が政府の公的資金制度に払い込むべきだとの見解を示している。