米国:2021年までにインディアンポイント原子力発電所の2基を早期閉鎖
米ニューヨーク(NY)州南東部でインディアンポイント原子力発電所2号機(PWR、106.2万kW)と3号機(PWR107.6万kW)(=写真)を操業するエンタジー社は1月9日、州政府と協議した結果、2号機を2020年4月に、3号機を2021年4月で永久閉鎖することで合意に達したと発表した。両炉はそれぞれ2013年と2015年に運転開始当初の運転認可である40年が満了。同社は2007年、両炉について20年の運転期間延長を米原子力規制委員会(NRC)に申請していたが、今後は延長期間の短縮をNRCに要請する計画だ。同州のA.クオモ州知事は2016年8月、州北部で稼働する3つの原子力発電所への補助金プログラムを盛り込んだ包括的な温暖化防止政策「クリーン・エネルギー基準(CES)」を州議会で成立させる一方、NY市の北40kmに位置するインディアンポイント発電所については「大都市圏に近すぎる」として、かねてより早期閉鎖を要求。今回の合意により、同社と州政府その他は双方に対する法的申し立てを撤回するとともに、州政府は期間を削減した同発電所の運転期間延長を支援することになる。同発電所1号機(PWR、28.5万kW)はすでに1974年に閉鎖済みだが、エンタジー社は2033年と2035年までそれぞれ運転予定だった2、3号機を早期閉鎖する背景として、近年および将来的な電力卸売価格の低下という経済的要因を挙げた。両炉の安全性についてはNRCの検査官が昨年、厳しいガイドラインに照らし合わせた上で最上位のカテゴリーに分類したほか、稼働率に関しても、エンタジー社が両炉を他社から購入して以降は90%台に改善されたと同社は強調した。しかし、州内に存在するシェール・ガス田「マーセラス」により、過去10年で1MWh当たりの電力価格は約45%減の28ドルに下落。インディアンポイントのような原子力発電所では1MWh当たり電力価格が10ドル低下した場合、年間収益が約1億6,000万ドル損なわれると説明した。
同発電所の閉鎖に関する主な合意事項、および付随して州政府が検討しているプランは以下のとおり。
・2、3号機の閉鎖時期はそれぞれ、2020年4月30日と2021年4月30日とする。発電量に影響するようなテロ攻撃など、緊急事態の発生時に州政府が2年間の延長を許可する場合もあり得るが、それぞれ2024年4月と2025年4月を超えることはない。
・同発電所の運転期間延長申請に対する訴状を取り下げることで、NY州政府と主要な反対派環境保護団体が合意した。州政府は、運転期間延長で必要となる沿岸域管理法の適合性認証と水清浄法に基づく水質認証、および排水許可をエンタジー社に発給する。
・NRCによる点検に加えて、州政府は同発電所の残余運転期間中に運転や規制、環境保全面の主な課題について毎年厳しい点検を行う。エンタジー社は2021年までに少なくとも24台の乾式貯蔵キャスクに使用済燃料を移送し、燃料交換の度に主要機器の健全性を確認する。
・2021年以降に同発電所の設備容量約200万kWを代替するため、州政府は送電網のアップグレードやエネルギーの効率化対策、再生可能エネルギーなどの適切な電源の運転開始に向けた措置を取る。これにより十分な電力を確保し、NY市民の電力代にも影響が及ばないことを保証する。
・閉鎖にともないエンタジー社は、従業員にその他の施設での職を提示する。州政府も州内の電力部門で従業員がその他の雇用機会を得られるよう働きかけ、再生可能エネルギー関係のスキル習得や訓練の場を提供する。
・発電所の地元コミュニティに対する責任や自然環境保護関係の責任を果たす一環として、エンタジー社は総額1,500万ドルの基金を設立する。