米ニュースケール社:米国で初めてSMR設計の認証審査申請
米オレゴン州を本拠地とするニュースケール社が、同社製の商業用小型モジュール炉(SMR)設計について、認証(DC)審査を原子力規制委員会(NRC)に申請したことが1月12日に明らかになった。SMR設計が米国のDC審査に掛けられるのは初めてのことで、NRCは約3年間の詳細審査で必要になる技術情報の有無など、申請受理の確認作業を3月半ばまでに完了する予定だ。オバマ政権は2013年、米国でのSMR開発を通じて米国が低炭素な次世代エネルギー技術開発のリーダーシップを握り、国内原子力産業を復活させるため、エネルギー省(DOE)が民間との共同出資プログラムにより、2つの有望なSMR設計についてエンジニアリング、DC審査などの許認可、および商業化を支援することを計画。ニュースケール社のSMRは、バブコック&ウィルコックス社製SMR「mPower」とともに対象設計に選定されていた。DOEはまた、ユタ州市町村公社(UAMPS)に対して、アイダホ国立研究所(INL)の敷地をニュースケール社製SMRの建設用地として使用することを2016年2月に許可。その他の許認可取得などを経て、早ければ2026年にも初号機の営業運転が開始される見通しとなっている。米原子力エネルギー協会(NEI)のM.コースニック理事長は今回のDC申請について、次世代の新型炉技術開発で歴史的な節目が刻まれたとコメント。「胸を躍らせるような新技術の開拓フロンティアにおいて、ニュースケール社は先駆者になった」との認識を示した。NEIによると、SMRは多くの点で大型炉より有利であり、具体的には電力需要に応じて出力を段階的に拡大できることや、工期が短いので小規模の電気事業者でも資金調達が容易な点などを指摘。モジュール毎にサイト外の工場で製造した後、建設サイトまでトラックや鉄道、船舶で輸送することも可能だとした。
ニュースケール社が開発したSMRは出力5万kWのモジュール統合型PWRで、モジュールを12基連結することで出力を最大60万kWまで拡大することができる。また、固有の安全性能により、異常な状況下で原子炉を自動停止し、人的介入や追加の注水、外部からの電力供給なしで無期限に原子炉の冷却が可能だという。同社がオレゴン州立大学でSMRに関する最初の開発・試験を始めてから10年以上が経過するなか、2011年には世界的なエンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約企業のフルアー社が同設計の主要投資家となった。DOEの官民共同商業化支援プログラムでは、5年間で2億1,700万ドルの連邦予算が同設計に投入されるが、ニュースケール社側の投資総額も、12,000頁を超えるDC申請書の提出に至った現段階で3億ドル以上に到達。初号機がINLで建設された場合は、UAMPSが所有者となる一方、運転は西海岸ワシントン州の電力企業、エナジー・ノースウエスト社が担当する。それ以降についても、ニュースケール社は複数の同社製SMRを米国西部で実証・開発することを念頭に、6州による広範な共同調査イニシアチブを起ち上げている。
DC審査は、米国で安全かつ適正な原子炉の利用を米国内で保証するための設計認証審査で15年間有効。事業者が原子力発電所の建設・運転一括認可(COL)を取得する際は、DCの発給を受けた標準設計の1つを採用しなければならない。NRCはこれまでに、ABWRやAP1000など6設計にDCを発給済みだが、複雑な同審査においては18の技術報告書と15の課題別報告書が必要になる。本格的な審査活動や原子炉安全諮問委員会(ACRS)によるフィードバック等を終えた後、NRCスタッフは対象設計を承認するための規則案を委員に提示。同規則案の公開協議を経て、DCが発給されることになる。