米国:SMR開発企業連合が官民連携による商業化を要請
米国で革新的な小型モジュール炉(SMR)設計の商業化を進めている企業連合「SMRスタート」は2月14日、米国で開発されたSMRの国内建設と将来的な輸出を加速するには、官民の連携が不可欠であると連邦政府に訴える声明文を発表した。同企業連合にとってSMRは将来の戦略的エネルギー・オプションの1つであり、今後国内で閉鎖されていく発電設備の一部を補うためにも米国は2020年代半ばまでに同技術を利用可能にする必要があるとした。そのため官民の連携は、SMR開発における臨時インフラの整備や市場リスクの軽減などにより技術開発を促進する「政策メカニズム」という位置づけであり、市場原理だけでは不十分な場合にも、様々な部分で官民が連携することにより、投資した以上の利益が国民にもたらされると指摘。民間企業はこれまで、SMR開発に10億ドル以上を投じてきたが、2020年代半ばまでに確実にSMRを利用可能な原子力オプションとするには、官民連携を通じてさらに多くの投資が必要になる。この投資により連邦政府側も、SMRの運転期間全体で関連の税収や雇用創出、経済生産といった形で見返りを得ることができると強調している。
SMRスタートは2016年1月、原子力発電事業やSMR開発に携わる9社が創設した企業連合で、現在はベクテル社やBWXT社、ホルテック・インターナショナル社、ニュースケール・パワー社、テネシー峡谷開発公社(TVA)など14社が加盟。米国ではエネルギー省(DOE)がすでに2012年から、官民折半のSMR許認可技術支援(LTS)プログラムに4億5,200万ドルを拠出し、有望な2つのSMR設計について商業化支援を実施中だが、同企業連合側では、国内建設と輸出という点でSMRが有する戦略的価値と固有の特質を適切に評価する法制が連邦政府や州政府で十分に整備されていないという認識。莫大な民間企業投資を補い、SMR技術から利益を得るには、議会が十分な資金を2018会計年度とそれ以降の予算で承認・充当すべきだとしたほか、同企業連合が想定している連携方法、および連邦政府が取るべきその他のアクションを次のように説明した。
(1)2017会計年度末に終了予定のLTSプログラムを継続するとともに、カバー範囲を設計の最終確定および規制審査と承認まで拡大する。2つ以上のSMR設計と複数の初期施設についてコストを折半することとし、2025年まで利用可能にする。
(2)1つのSMR商業化プログラムにより、新たなSMRの自動継続的な開発が可能になるよう促進する。それには以下の投資メカニズムを組み合わせたプログラムを利用可能にすべきである。
・「発電税控除(PTC)」:2005年のエネルギー政策法の下で、新しい原子力設備の発電電力に一定の税額控除が付与されたが、期間的にも容量的にも不十分だった。PTCにより新たなSMRで初号機リスクを相殺できるので、現行の満了期限である2020年以降もPTCを利用可能にする。また、公的機関から民間のプロジェクト参加者にPTCを移転できるようにする。
・「電力購入契約(PPA)」:完成したSMRの発電電力について、DOEと国防総省(DOD)がSMR所有者と長期の購入契約を結べるよう議会がプログラムを策定し、国家セキュリティ上重要な施設や連邦政府の優先目標達成に資する施設に低炭素で信頼性の高い電力をSMRから供給する。PPAは行政管理予算局が管理し、連邦予算から単年度単位で充当する。
・「融資保証プログラム」:総工費の80%まで保証するDOEの現行プログラムを継続し、SMRの設計・建設およびSMR機器の製造施設までカバーする。
(3)SMR投資に対する税額控除(ITC)を実施し、米国内でのSMR施設の製造と海外への機器輸出を実現できるような強固なサプライ・チェーンを形成する。
(4)DOEがSMRの革新的能力に関する研究開発と実証を行う。例としては、負荷追従運転や産業用プロセス・ヒートの供給、海水の脱塩と精製、熱電併給への応用など。
(5)SMRによる発電電力を主要な配電網から独立した分散型電力網に確実につなげるため、DOEとDODが要件と仕様を作成する。これにより、連邦政府の重要施設が自然現象や意図的な破壊工作の影響を受けにくくなるよう、信頼性と回復力の改善を図る。