トランプ政権の2018年度予算案、ユッカマウンテン処分場計画に予算措置

2017年3月17日

 米国のD.トランプ政権は3月16日、同政権初の予算教書となる2018会計年度(2017年10月~2018年9月)予算案の骨子を議会に提出した。エネルギー省(DOE)分の提案額の中に、オバマ政権が2011年に中止したネバダ州ユッカマウンテンにおける使用済燃料最終処分場建設計画の許認可活動再開予算を含める一方、原子力発電所などの新設計画に対する融資保証プログラムを削除。発電部門におけるCO2排出量削減を目指したオバマ政権の「クリーン・パワー計画」や国際的な気候変動対策プログラム、気候変動関係の研究・パートナーシップ・プログラム等への予算措置も打ち切るとしており、原子力産業界は同日、期待と失望が入り交じった声明文を発表した。このような予算案の詳細については、5月に改めて公表されると見られている。

 行政管理予算局(OMB)が取りまとめた全62頁の予算案骨子によると、DOEの2018年度予算は280億ドルで、2017年度予算から5.6%減。それでも、核弾頭の寿命延長など核配備能力の増強を念頭に国家核安全保障局(NNSA)予算は11%増になっている。ユッカマウンテン処分場建設計画の許認可活動再開、および盤石な中間貯蔵プログラムの開始には1億2,000万ドルを計上しており、こうした投資を通じて、放射性廃棄物対策における連邦政府の義務事項の履行を加速。国家の安全保障を強化するとともに、将来的な納税者負担も軽減できるとした。また、予算措置を集中する部局としては、エネルギー効率・再生可能エネルギー局、原子力エネルギー局、配電・電力信頼性局などを列挙。送配電グリッドで障害が発生した際の回復力やサイバー・セキュリティ対策を増強することにより、米国民とその経済活動が頼りとする重要な送配電インフラの強化を図ると説明した。一方、リスクの高い応用研究対象に支援を行っているエネルギー高等研究計画局や、エネルギー政策法・第17条に基づいて行われている革新的クリーン・エネルギー・プロジェクトへの融資保証プログラム等は廃止すると明記。理由としては、エネルギー関係の研究開発に資金投入したり、革新的技術を商業化するには、民間部門の方が好位置に付いているからと説明している。

 これに対して原子力エネルギー協会(NEI)のM.コースニック理事長は声明文を発表し、政府がユッカマウンテン処分場計画と中間貯蔵プログラムの両方に予算措置を講じるとした点に、原子力産業界は勇気付けられたと称賛。産業界は同政権および議会とともに、使用済燃料管理プログラムを立て直したいとの希望を述べた。
 しかし、原子力の研究開発予算が削減されることについては「革新的エネルギー技術の開発者を不安に陥れている」と指摘。米国が諸外国と対等な立場で国際競争に打ち勝てるよう、十分な予算を研究開発に充当してほしいと訴えた。同理事長によると、「原子力技術を市場に売り出すための官民パートナーシップは歴史的にDOEプログラムが支えてきたという事実を、政府と議会は予算レベルを設定する際に思い出す必要がある。国は強力な原子力産業から恩恵を受けており、研究開発予算を今、削減すれば、ロシアや中国といった競争国に米政府がリーダー的立場を譲り渡しつつあるとのシグナルを、最もまずいタイミングで世界中に発信することになる」とした。
 同理事長はまた、原子力技術で米国がリーダー的立場を確保するには、注意深い政策的支援とともに、関係する重要機関の欠員を埋めることも必要だと強調した。具体的には、国中の電力市場で原子力発電所の価値や恩恵が公平に評価されていないという欠陥の是正に断固として取り組みつつ、ジョージア州のボーグル原子力発電所増設計画を支えている融資保証制度を無条件で維持するといった広範なアクションが、多方面の行政部門から必要だと指摘。原子力規制委員会(NRC)と連邦エネルギー規制委員会(FERC)で空席となっている委員ポストについても、早急に指名を行うよう促している。