米フィッツパトリック原子力発電所の売買手続 完了、運転も再開
米国の大手原子力発電事業者であるエクセロン社は3月31日、エンタジー社がニューヨーク(NY)州で運転していたJ.A.フィッツパトリック原子力発電所(87.9万kW、BWR)の所有権を1億1,000万ドルで購入する手続を完了した。「ニューヨーク独立系統運用者(NYISO)」がカバーする自由化された電力卸売市場では、低価格な天然ガス等により同発電所の収益は大幅に悪化。エンタジー社は同発電所を2017年1月に永久閉鎖する予定だったが、NY州の公益事業委員会(PSC)が昨年8月、CO2を排出しない発電設備に対する財政支援プログラムを盛り込んだ「クリーン・エネルギー基準(CES)」を採択したことから、エクセロン社が同発電所を購入し、運転継続する計画を明らかにしていた。同発電所ではすでに2月に燃料交換とメンテナンスが完了し、3月1日から新たな運転サイクルで再稼働を果たしている。
今回の売買取引では、同発電所の運転認可と廃止措置信用基金が負債とともにエクセロン社に譲渡されたが、これには連邦政府や州政府の複数機関による規制上の審査と承認が不可欠。司法省や原子力規制委員会(NRC)、連邦エネルギー規制委員会(FERC)、州のPSCなどが審査にあたった。エクセロン社としては発電所の職員配置を直ちに変更する考えはなく、これまでどおり約600名の従業員を雇用。同発電所の熟練した従業員チームをエクセロン社の原子力発電プログラムに加えるとともに、この重要なエネルギー資産がもたらす環境面や経済面、送電グリッドの信頼性といった観点からの恩恵を今後もNY州に提供していきたいと述べた。同社はまた、CESの採択を主導したA.クオモNY州知事と州政府のリーダーシップと政策ビジョンを称賛しており、CESによって、州内の原子力発電所が州政府経済にもたらす年間30億ドルもの貢献や、間接雇用も含めて25,000人分の雇用が維持されると指摘。フィッツパトリック発電所のみならず、同社が州北部で運転するR.E.ギネイおよびナインマイルポイントの両原子力発電所も早期閉鎖のリスクを免れると強調した。
一方、エンタジー社も31日付けで声明を発表し、連邦政府の運転認可や約600名の発電所従業員を間断無くエクセロン社に託せたことを高く評価。フィッツパトリック発電所の売却は、長期契約に基づかない競争市場環境下における電力販売事業からの脱却に向けた一歩になったとの認識を示した。同社はまた、今年1月にNY州南東部に立地するインディアンポイント原子力発電所の2基を2020年と2024年に早期閉鎖することで州政府と合意。NY市の北40kmに位置する同発電所について、クオモ州知事は「大都市圏に近すぎる」としてCESの財政支援プログラムの対象としない方針をかねてより表明していた。