欧州原産連合:ユーラトム離脱で移行期間の代替取り決めを英国に勧告
英国が欧州連合(EU)から離脱する(Brexit)のにともない、欧州原子力共同体(ユーラトム)からも離脱すると同国政府が表明していることについて、欧州原子力産業会議連合(フォーラトム)は4月3日、ユーラトム条約に代わる新たな協定を締結するまでの移行期間に、代替取り決めを手配しておくことは非常に重要との見解を発表した。必要ならば、英国はユーラトム条約の条項適用を延長してもらうべきだと勧告しており、離脱手続を行う2年間でユーラトムからの離脱準備が整わなかった場合に、原子力開発利用の様々な分野でそうした取り決めが及ぼす影響は大きいと指摘。EUに加盟する残りの27か国や、ユーラトムの枠内で原子力協力協定を結んでいる日本、米国、カナダなどの第三国、および国際原子力機関(IAEA)などの国際機関と新たな協定を結ぶのに必要な時間的猶予も、十分得ることができるとの認識を明らかにした。
英国のT.メイ首相は3月29日、EUからの離脱を通告する書簡を欧州理事会に手渡しており、これにより英国はEUの基本条約(リスボン条約)第50条に沿って、離脱に向けた手続を正式に開始することになった。フォーラトムのJ.P.ポンスレ事務局長は英国に対し、「ユーラトムに加盟していれば、原子力発電所の新設や廃止措置、研究開発その他のプログラムで間断無く作業を行えるが、離脱手続が始まった以上、新しい協定を締結するまでの間、英国はユーラトム条約の条項を遵守すべきだ」と提言。ユーラトム条約における主要目的の1つに原子力資機材と技術の自由移動があり、離脱によってEUとの定期的な原子力貿易に途絶が生じる可能性があると述べた。
安全確保と保障措置の問題についてフォーラトムは、盤石で安定した原子力規制当局と規制体制が英国に備わっているため、ユーラトムから離脱したからと言って英国原子力産業の安全性が低下するとは思わないと強調。しかしその一方で、英国には離脱に際して、国際的な原子力保障措置上の義務を履行する適切な枠組を設定する必要があるとした。また、離脱による影響が大きい主要分野として、ユーラトムが創設したEU統一原子力市場からの原子燃料供給と原子力研究に言及。核分裂や核融合関係の研究開発に参加し、そうした研究開発活動の成果や情報を共有する出入り口をユーラトムが提供しているのみならず、EU全体の研究開発の質を向上させる基盤にもなっていることを説明した。
英国は現在、15基の商業炉で総発電量の約20%を賄っているほか、新たに1,600万kWの原子力設備の建設を計画しているが、それらは英国における供給電力の低炭素化と、最も低コストなエネルギーの供給保証に貢献するとフォーラトムは明言。欧州全体で見ても、原子力は同様の目的の達成に貢献する重要電源だとしており、その根拠としてEUに加盟する28か国中14か国で合計129基の原子炉が稼働していること、これらによる発電シェアがEU全体の27%を占めるとともに、低炭素電源による発電量では約50%に達することを挙げた。また、原子力発電所は60年にわたって安定したベースロード電源になり得るほか、欧州域内で80万人分の雇用を支えているという事実を示した。