米国の2つの原子力発電所増設プロジェクト、完成までの追加経費は計40億ドル
米国で30年ぶりの新規原子力発電所建設計画であるジョージア州のA.W.ボーグル3、4号機とサウスカロライナ州のV.C.サマー2、3号機のプロジェクトについて、建設工事を請け負ったウェスチングハウス(WH)社が両プロジェクト(WH社製AP1000、各2基ずつ)を完成させるための追加経費が合計で約40億ドルにのぼると見積もっていることが明らかになった。サマー増設プロジェクトに55%出資するサウスカロライナ・エレクトリック&ガス(SCE&G)社と親会社のスキャナ社が4月12日にサウスカロライナ州公益事業委員会(PSC)に報告したもので、スキャナ社としては2、3号機両方の完成を望んでいるものの、どちらか1基を完成させるか、2基とも断念して関連法に基づく資金回収を模索するか、などの選択肢も同等に検討している。WH社が3月29日に再建型の倒産法適用を申請したのにともない、両プロジェクトの出資者達とWH社は「中間評価協定」を締結。現在は同協定の下で建設工事が続けられている。しかし、4月28日に同協定が期限切れとなる前にプロジェクトの今後に関する選択肢や追加経費の評価・確認作業が完了しなかった場合、スキャナ社としては協定の延長を要請する可能性もあるとした。同社はまた、WH社がエンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約に基づく損害賠償を支払えない場合は、親会社保証として東芝に請求できるとしている。
スキャナ社の発表によると、追加で必要となる40億ドルのうち、約15億ドルがサマー増設プロジェクトの分。SCE&G社が同プロジェクトに55%出資していることから、同社の負担分は8億2,500万ドルという計算だが、これらは主に、EPC契約における固定価格オプションに関係していると説明した。同社は昨年5月の段階で、2基を完成させるため、WH社とのEPC契約で同オプションを行使するとPSCに申請。追加コストとしてSCE&G社が支払わねばならない額は8億5,200万ドルだが、このうち5億500万ドルが固定価格オプションに直接関係する経費だとしていた。PSCはその後、11月にこの申請を承認しており、この時点で計算されたSCE&G社の追加負担額は8億3,100万ドル。共同出資者であるサンティー・クーパー社の正式な同意が得られれば、WH社とのEPC契約が修正され、それ以降の超過コストはWH社側の負担になると見られている。
また、PSCへの報告の中でスキャナ社幹部は、2つの原子力発電所建設プロジェクトにおける契約責任を回避するためにWH社は破産法を申請したと指摘。40億ドルという追加経費はあくまでWH社が見積もった額であり、両プロジェクトの出資企業としてはまだ、この額の確認作業を終えていない。倒産法の適用により、WH社は固定価格オプションにともなう義務から逃れる機会を得たが、サマー増設プロジェクトの出資企業は中間評価協定に基づく作業継続経費を、WH社の主要受託業者のフルアー社等に直接支払っており、この額は毎週約3,000万ドル(SCE&G社の負担分は1,650万ドル)、月額で1億2,000万ドル(SCE&G社は6,600万ドル)にのぼるとした。一方で、出資企業は損害賠償を請求する権利も、中間評価協定に基づいて持っているとスキャナ社は主張。一般的に出資企業は、WH社がEPC契約に違反した時点までに支払った金額の25%まで賠償請求できるが、この場合の上限は約17億ドルであり、SCE&G社の取り分は9億4,000万ドルになる。WH社が支払えなければ東芝がこれを支援する立場にあり、東芝に直接、支払を求めることができるとの認識を明らかにした。
現在、サマー増設プロジェクト全体の建設進捗率は63.4%で、物理的な建設作業は両機平均で33.7%が完了。昨年11月現在のスケジュールで、2号機は2019年8月、3号機は2020年8月の完成が予定されていた。