米規制委、小型炉等の緊急時対応要件策定で規制根拠案のパブコメ開始
米原子力規制委員会(NRC)は4月18日、小型モジュール炉(SMR)や軽水炉以外の新しい原子炉技術について専用の緊急時対応要件を策定するため、その規制上の理由付けを記した文書(規制根拠)の案文をパブリック・コメントに付した。米国では巨額の資本投資を必要とする大型炉の建設が滞る一方、建設コストや工期の削減が可能なSMR開発を様々な企業が進めている。すでに2016年5月、テネシー峡谷開発公社(TVA)はテネシー州のクリンチリバー・サイトについて、SMR建設を念頭に置いた事前サイト許可(ESP)審査をNRCに申請したほか、オレゴン州を本拠地とするニュースケール社が今年1月、SMRとしては初の設計認証(DC)審査を同社製の商業用SMR設計について申請した。また、同社を含む14のメーカーと電力会社は2016年、米国製SMRの商業化と将来的な輸出を目指す企業連合「SMRスタート」を結成。NRCとしても、小型で革新的な安全性能を有する原子炉であれば、事故時の条件課題やリスクが大型軽水炉より軽減されるとの認識から、それらに適した新しい要件を課せるよう規則を制定することになったもの。
規制根拠の案文作成は規則制定プロセスの初期段階に相当し、NRCスタッフはその中で新たな規制要件を策定することになった論理的根拠を示す。具体的には、既存の規制に対する更新や改訂、あるいは強化の必要性を説明するとともに、代替規則案を提示し、変更にともなう影響やコストを検討した内容になる。今回の規制根拠案については、6月末まで一般からコメントを募集する計画で、公聴会も5月にNRCの本拠地で開催する。そこでの議論やコメントを踏まえて規制根拠文書が完成した後、スタッフは提案規則を作成。これをNRCが審査・承認した上で、改めてパブコメに付す。得られたコメントを分析して最終規則案を作成した後、再びNRCが審査。承認が得られれば連邦官報に掲載という手順になっており、通常はその30日後に最終規則が発効することになる。
既存の規制枠組においては、緊急時対応の要件策定にあたり、3つの重要な情報要素を考慮する必要があるとNRCタスクフォースおよび環境保護庁(EPA)が定めている。すなわち、(1)原子力発電所からの距離に応じて防護措置が予め保証された区域を特定すること、(2)事故発生後、放射性物質の放出が始まるまでの時間が事故の種類毎に異なること、(3)放出の可能性がある放射性物質の種類毎に対応が異なること--である。SMRと非軽水炉用の要件策定においては、原子炉設備が小さく事故に伴うオフサイトの影響も小さいこと、出力密度や過酷事故発生確率の低さ、事故事象の進行速度の遅さなどを考慮した上で、緊急時計画対応区域の適切な広さ、オンサイトとオフサイトにおける緊急時計画の規模、対応に要するスタッフの人数、およびその他の課題を反映した規則が提案されると見られている。