IAEAの技術WG、研究炉の運転継続で加盟国への継続的支援 勧告

2017年4月28日

 国際原子力機関(IAEA)の研究炉技術ワーキング・グループ(TWGRR)は4月26日、研究炉の安全かつ持続可能な運転に向けた支援の重要性に鑑み、加盟国における新たな研究炉開発プロジェクトの支援、および研究炉を持たない加盟国が国外の施設を利用可能になる取り組みを継続的に行うべきだとIAEAに勧告した。世界では現在、55か国で約250基の研究炉が稼働しているが、近年は経年化が進んだ設備の管理や効果的な活用といった課題が浮上している。研究炉は原子力関係の研究、教育・訓練の面で大きな役割を担うとともに、医療用・工業用の放射性同位体生産にも使われることから、レベルの高い安全性の維持は、その社会的恩恵を最大化するとともに、有効活用を保証する上で非常に重要とIAEAは認識。効果的な規制や高経年化という課題への対処という点では特に、IAEAの安全基準を厳格に適用することが一助になるとしている。

 IAEAの技術ワーキング・グループには、事務局や加盟国政府が指名した専門家が所属しており、原子力発電エンジニアリング・セクションのプログラムを実行する際に助言や支援を提供するほか、原子力常設諮問グループの議論において重要課題を特定する。TWGRRは研究炉を保有する加盟国の原子力関係規制者や上級管理職など約20名の専門家で構成。ウィーンのIAEA本部で毎年、加盟国が研究炉を合理的に運転するために必要な勧告をIAEAのために協議している。TWGRR議長を務める米アイダホ国立研究所・新型試験炉総合施設のS.オケリー副所長によると、世界の研究炉のうち約半数が40年以上稼働しており、安全で効率的な運転を続けるには設備の最新化が中心的な課題であり、既存の研究炉の中には、今以上の利用者を受け入れる余裕があるため、研究炉を持たない加盟国の研究者に活用してもらうことができるとの考えを述べた。

 この関連で、IAEAはすでに複数の支援イニシアチブを開始しており、その1つが2014年に起ち上げた「国際研究炉センター(ICERR)」構想である。フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)がカダラッシュで建設中のジュール・ホロビッツ研究炉(タンクプール型、熱出力10万kW)を2015年9月に初めて、ICERR施設に認定しており、完成後は研究炉のない加盟国が将来的な専門家を効率的かつ低コストで確実に育成するために利用できることになった。また2016年9月には、ロシアのウリヤノフスク州ディミトロフグラードにある国立原子炉科学研究所(RIAR)をICERR施設として指定。RIAR内の研究炉6基で、炉心機器や照射済み材料などの照射後試験が可能になった。なお、RIARでは2015年9月に鉛や鉛ビスマス、ナトリウムなどによる冷却が可能な多目的高速中性子研究炉(MBIR)が本格着工した。同炉が完成した後、「MBIR国際センター」に出資参加する国は、IAEAが革新的原子炉の導入環境整備を支援するために設置した国際フォーラム「INPRO」の枠内で、MBIRの中性子束/燃料チャンネルを分割・利用できることになっている。