アルゼンチン4基目と5基目の原子炉建設で中国と一括請負契約

2017年5月18日

 中国核工業集団公司(CNNC)は5月17日、アルゼンチンで4基目の原子炉となる加圧重水炉(PHWR)と5基目となる同国初のPWR建設計画について、アルゼンチン国営原子力発電会社(NA-SA)と一括請負契約に調印したと発表した。両者はすでに2015年11月中旬、4基目に関する技術・商業契約と5基目に関する協力枠組協定を締結しており、これらの計画に対する投資額150億ドルのうち、85%は中国工商銀行などを通じて中国側が支援することになっていた。しかし、同月下旬のアルゼンチン大統領選挙で政権が中道右派に交代。計画の再検討が行われていたと見られている。今回の契約により、70万kW級のカナダ型PHWR設計「CANDU6」を採用した国内4基目のアトーチャ原子力発電所3号機は2018年に着工するほか、中国が知的財産権を有する輸出用第3世代設計「華龍一号」を採用したアルゼンチン5基目の原子炉が2020年に着工することになった。5基目の建設サイトについては、同国南部のパタゴニア地方になるとの情報がある。

 今回の契約は、北京で開催されていた「一帯一路フォーラム」でアルゼンチンのM.マクリ大統領が中国の習近平国家主席と会談した際、両国間における複数の合意項目の1つとして結ばれた。両首脳立ち会いの下で、NA-SAとCNNC、およびCNNC傘下のエンジニアリング企業である中国中原対外工程公司の幹部が契約文書に調印。CNNCはこの調印により、中国が輸出に成功した基数は合計8基になると強調している。

 アルゼンチンでは現在、エンバルセとアトーチャの両原子力発電所で合計3基のPHWRが稼働中。このPHWR路線と並行して軽水炉の導入も進めており、ロシアとは2010年にロシア型PWR(VVER)の建設可能性調査に関する合意文書を交わしている。一方、中国はCNNCと中国広核集団有限公司(CGN)双方の第3世代PWR設計を一本化した「華龍一号」設計の標準化を進めているが、PHWRについても2002年から、CNNCがカナダ型PHWR(CANDU炉)を秦山3期工事として運転中。CANDU炉メーカーのSNCラバリン社とは2014年、「CANDU6」と「改良型CANDU6(EC6)」技術に基づく第3世代原子炉を、中国で共同建設していく協力覚書を結んだ。また、同じ年にカナダ連邦政府と中国国家能源局は、新型CANDU炉の開発と第3国市場への輸出を含めた民生用原子力分野で、両国間の協力を進展させる覚書に調印している。4基目のPHWR建設については、昨年11月にNA-SAがSNCラバリン社と6か月間の「プロジェクト前契約」を締結。長納期品の予備設計や安全分析、許認可支援、およびその他の技術サービスが、カナダ側から提供されていた。