インド内閣、技術の国産化促進で加圧重水炉10基の建設 承認

2017年5月19日

 インド首相府は5月17日、国内原子力産業の急速な発展を促進するため、N.モディ首相を議長とする閣議で70万kW級の国産加圧重水炉(PHWR)10基の建設を承認したと発表した。インドは2032年までに原子力発電設備容量を6,300万kWとし、2050年までに総発電量に占める原子力の割合を25%まで拡大するため、国産PHWRの建設を推進中。1971年にカナダ型PHWR(CANDU炉)をラジャスタン発電所として導入して以降、国内原子力産業界における技術の国産化は大幅に進展している。インド原子力発電公社(NPCIL)のS.K.シャルマ総裁は4月12日の原産年次大会で、マディヤ・プラデシュ州チャットカ、ラジャスタン州マヒ・バーンスワーラー、カルナータカ州カイガ、ハリヤナ州ゴラクプールの4サイトで、70万kW級PHWRを新たに合計10基建設する準備活動が活発に行われていると発表。今回これらが正式に閣議決定したと見られている。

 首相府の発表では、インドでは22基、678万kWの原子力発電所が稼働中であるのに加えて、現在建設着手中、建設中、あるいは試運転中の9基、670万kWが2021~2022年に運転開始する予定。政府間協定により国外メーカーから軽水炉を導入する計画も徐々に具体化しており、すでにタミル・ナドゥ州のクダンクラム原子力発電所でロシア型PWRの1、2号機が営業運転中のほか、3、4号機の着工記念式が2016年10月に行われた。フランスとはアレバ社製欧州加圧水型炉(EPR)をマハラシュトラ州ジャイタプールで6基建設する計画の実現に向け、NPCILとフランス電力が昨年3月、協力覚書の改訂版に調印。アンドラ・プラデシュ州コバダで米国籍のウェスチングハウス社製AP1000を6基建設する計画については、3月末の同社の倒産法申請により先行き不透明となったものの、米印両国首脳が2016年6月の声明の中で、サイトでの準備作業が始まったことを明らかにしていた。

 首相府によると、10基まとめての建設承認は本格的な国産化イニシアチブの一部という位置づけであり、原子力部門で最も重要な「インド国産化プロジェクト」の1つ。同部門が掲げる意欲的な目標に沿って国内産業に約7,000億ルピー(約1兆2,000億円)相当の機器製造を発注し、インド原子力産業界が高度な国産技術力を備えたものに変化するよう支援する。同プロジェクトにより、建設計画のスケール・メリットが大幅に向上し、コストと工期の効率性は最大限に拡大。間接雇用も含めて約33,400人分の雇用創出が期待されるとしたほか、国内産業に製造発注することで、原子力発電所の機器製造に関するインドの能力増強が大きく前進するとの認識を示した。

 また、今回の10基は、最も厳しい安全基準に適合したインド最新のPHWR設計を採用する予定。その建設を承認することによって、首相府としては、インドの科学者には高い技術力を身につける能力があるとの強い信念を示す意図があった。そのため、国産化プロジェクトにおける設計や開発は、インドの原子力科学と産業が急速な発展を遂げてきた証拠であり、国産PHWR技術の全てにおいて、原子力科学者達が専門的技能を獲得したことを明確に示していると強調した。首相府はさらに、今回の閣議決定が、国内エネルギー・ミックスでクリーン・パワーの利用を最優先するとしたインド政府の低炭素化戦略を反映していると指摘。原子力によって、インドの近代化に必要なベースロード電源を長期的に確保するとともに、地球温暖化防止に向けた国際的な努力の促進と経済の持続可能な発展、エネルギー自給という誓約を果たしていく方針だと明言している。