米WH社、「一層競争力を有する企業として復活を目指す」
米国のウェスチングハウス(WH)社のJ.グティエレス暫定社長兼CEOは5月24日、連邦倒産法の再建型処理手続適用を3月末に申請して以来、初めて公の場で同申請に関する講演を行った。米原子力エネルギー協会(NEI)が22日から24日まで、アリゾナ州スコッツデールで開催した原子力産業界の年次大会に登壇したもので、約700名の観客に対して同CEOは、米国内の2件の増設計画を除けばWH社が非常に安定した状態で再建計画を進めており、これまでよりも強力かつ一層競争力を持った企業として、迅速に倒産手続から脱却する自信があると明言した。ジョージア州A.W.ボーグル原子力発電所とサウスカロライナ州V.C.サマー原子力発電所で増設途中の同社製AP1000(合計4基)については、事業者達と長期的な解決策を模索しているところだと説明。倒産法の申請はAP1000技術そのものとは無関係であり、中国で建設中のAP1000が完成に近づきつつあることを強調した。
米国における2件の増設計画は国内で約30年ぶりの新設計画であり、AP1000の初号機でもあったため、工期が延長されたのにともないコストが大幅に超過。同社は再建型倒産法の適用を申請することで、原子炉機器と燃料の設計・製造や稼働中発電所の支援、および廃止措置、除染、サイト復旧、放射性廃棄物管理といった基幹事業を保護するとともに、事業を続けながら再建計画を進める時間を確保した。グティエレスCEOによると、これら4基の建設工事はWH社が意図したほど順調には進まず、米原子力規制委員会(NRC)はAP1000設計を米国標準設計の1つとして承認した後、福島第一原子力発電所事故に伴う規制要件を追加。これにより、工事が一層複雑になったと述べた。ボーグル計画の主要事業者であるサザン社およびサマー計画に6割出資しているスキャナ社とは、4基を完成に導く方法を共同で捜しているとしたものの、詳細に関する言及は避けた。実際のところ、倒産法を申請して以降のWH社は、基幹事業が引き続き堅調であると同CEOは指摘。燃料や関連サービスの供給で複数の契約を獲得したという事実がその裏付けとなっており、過去3か月間に同社が21基の原子炉に対して定検スケジュール通りに燃料を納入したことを明らかにした。同社としては原子炉の設計事業も継続する方針で、将来的な原子炉受注を追求していくとしたが、その際のプロジェクト・モデルは米国の計画よりもリスクの軽減が図られた中国計画のものに近くなるとの見通しを示した。
ボーグルとサマーの両増設計画で4基すべてを完成させるには、合計約40億ドルの追加経費が必要との見積額をWH社は両計画の事業者に提示。これらの事業者はWH社と結んだ「中間評価協定」が6月に満了するまでに、サイトの工事を継続しつつも、4基すべてかそれぞれ1基ずつ完成させる、あるいはすべて断念するなどのオプションについて方針を確定する。倒産法の適用申請時に親会社の東芝は、WH社グループが再建期間中の基幹事業継続のために第三者からの資金調達(DIPファイナンス)として8億ドルを確保済みであり、このうち最大2億ドルを東芝が債務保証する予定だと公表した。WH社側もこれ以外に、手持ちの銀行信用状が全額、現金担保されており、DIPファイナンスによって新規の信用状を発行してもらうことも可能と明言していた。しかし、現地の報道によると、いかなる信用状も原子力発電所建設計画への使用が禁じられているとの見方が伝えられている。