米監査院、ユッカ計画の再開に必要な4段階のステップ 特定
米国政府監査院(GAO)は5月26日、ネバダ州ユッカマウンテンにおける使用済燃料と高レベル放射性廃棄物(HLW)の深地層処分場建設計画について、許認可プロセスを再開し、最終的な建設の可否を下すのに必要と思われる4段階の主要ステップを報告書として取りまとめた。GAOは連邦議会の要請に基づき、政府機関の財務検査や政策プログラムの評価を通じて予算の執行状況を監査する機関。共和党のD.トランプ政権が2018会計年度でユッカマウンテン計画の建設許可審査再開に1億2,000万ドルの予算措置を提案していることから、GAOはエネルギー省(DOE)が2010年3月に処分場建設許可申請の取り下げを原子力規制委員会(NRC)に要請した後のアクションや、許認可プロセスの再開に関するDOEやNRCのプランを調査した。同プロセスを再開/完了させるために期待できるステップおよび、そうしたステップを成功に導く上で影響するファクターも特定しており、数多くのファクターがこの目的に必要な「時間」に影響すると指摘。関連情報の量や複雑さにより、建設を擁護するDOE側の専門家を新たに任命するまで、これまでの倍近い少なくとも1年を要するとしている。
米国では現在、33州に立地する原子力発電所の敷地内で8万トン近い放射性廃棄物を貯蔵中。「1998年までに政府が原子力発電所から使用済燃料の引き取りを開始する」と規定した放射性廃棄物法上の義務を果たすため、DOEは2008年にユッカマウンテンの深地層にこれらの廃棄物を貯蔵する施設の建設許可をNRCに申請した。しかし、オバマ政権の打ち切り決定により、ユッカマウンテンは処分場建設の実施可能オプションではなくなり、DOEとNRCは同計画の技術審査や最終的な可否判断など、プロセスの残り部分を実行する機能の大部分を廃止。DOEが同プロセス継続用の予算措置を削減したほか、NRCも技術審査の実施停止や公聴会用特別施設からの退去といった措置を2011年9月までに完了した。ただし、残余予算の範囲内で建設許可申請の審査を続けるよう連邦巡回控訴裁判所が2013年に裁定したことから、NRCは2014年から2016年まで審査を再開。全5巻で構成される主要な技術文書「安全性評価報告書」を2015年1月に完成させたものの、最終的な可否の判断には至っていなかった。DOEとNRCはともに、最終判断を下すための作業完了には最大5年かかるとの認識を2016年後半から今年初頭にかけて示しており、これを実施する正式なプランも存在しないと明言していた。
GAOは、同計画関連でこれまでに作成された文書や関係者とのインタビューを分析した結果、必要とされるステップの中でも特に、NRCの委員5名を始め、最終判断を下す際の関係者(DOE、NRCスタッフ、関係する17の非連邦政府機関)が取るべき段階的なアクションを特定。以下のように説明している。
(1)DOE、NRCスタッフ、非連邦政府機関などの関係者は、許認可プロセスの再開と完了で必要となる指示を受領し、予算措置を講じる:このアクションは3段階で構成され、まず、議会あるいは政府の再開指示に対応する形でNRCが関連機関にプロセス再開を指示。NRCは次に、最終判断を下す際のタイミングなど様々な側面について判断を下して指示を出す。最後にNRCとDOEおよび関係機関は必要な経費を見積り、予算措置を講じる。
(2)関係者はプロセス再開に必要な組織的能力を再構築し、これまでの作業文書をアップデートする:これも3段階のアクションで構成されており、NRCとDOE、および非連邦政府機関はまず、専用オフィスを改めて設置するのに必要なスタッフ、科学技術面や法制面の専門家を雇用。次に、必要に応じて建設許可申請文書などの重要書類をアップデートし、最後にNRCとDOEが物理的なインフラを再構築する。
(3)原子力安全許認可会議(ASLB)が関係者を再招集し、最終判断を下すために必要な作業を完了する:NRCの諮問機関であるASLBのパネルはこれまで、公聴会の開催日程など最終判断に向けた作業の詳細情報を収集する会合を関係者と開いており、その際の決定事項や指示の中には未だに有効なものもある。このため、ASLBは供述記録の採取日程など、それ以外の項目について関係者と協議することが必要。最終判断を下すための作業が一旦再開されれば、関係者は証人となる専門家などから供述記録を採ったり発見事項を取りまとめ、ASLBとともに、発見事項の提出や公聴会の実施など、残っている作業を実行に移す。
(4)最終判断を下す残りの作業を完了する:この段階では、すべての論点に関する最終的な判断作業が完了。NRCは情報全体の完全性に関する審査を実施した上で、審査の完了を核物質・安全保障措置室長に通達する。NRCはユッカマウンテン処分場の建設を承認したことになり、NRC規制に基づいて、核物質・安全保障措置室長が建設承認を発給することになる。