米NY州らの主導で「米国気候同盟」結成、温暖化防止対策続行へ
米国のD.トランプ大統領が地球温暖化対策の新ルールであるパリ協定から離脱すると正式表明したのを受けて、ニューヨーク(NY)州のA.クオモ知事とカリフォルニア州のE.ブラウン知事、およびワシントン州のJ.インズリー知事は6月1日、これらの3知事が共同議長を務める州政府の連合体「米国気候同盟」を結成した。パリ協定が設定したCO2排出基準を満たすなど、民主党前政権の対策も含めて温暖化防止に向けた活動を積極的に進めていく方針を表明したもの。3州の知事はすべて民主党支持派だが、5日の声明でクオモ知事は新たに10州が同同盟に加わったと発表しており、このうち2州の知事は共和党支持派。CO2排出量を2005年レベルから26~28%削減するという米国の誓約と前政権が指示した「クリーン・パワー計画」における目標の達成、あるいはこれを上回ることを参加州政府が超党派で目指すことになる。NY州の公益事業委員会は昨年8月、同計画への対応の一環として、CO2を排出しない発電設備に対する財政支援プログラム(ZEC)を盛り込んだ「クリーン・エネルギー基準(CES)」を採択。州北部に3つの原子力発電所を所有するエクセロン社は同日、「CESとZECのお陰で、3発電所の燃料交換とメンテナンスがこのほど完了し、合計3億1,000万ドルを継続投資するに至った」と発表しており、このような政策の有用性はすでに立証されていると強調した。
発表によると、「米国気候同盟」はすべての参加州から意見を募るなど、フォーラムとして機能。既存の温暖化防止プログラムを維持・強化するとともに、経済社会の全部門でCO2排出量を削減する新しいプログラムの導入や、良慣行と情報の共有を促進する。クオモ知事は同盟の結成に際し、「ホワイトハウスの無謀な決定は、米国のみならず地球にも及ぶ大きな打撃を与える」とコメント。トランプ政権が温暖化防止という世界規模の闘いでリーダーシップを正式放棄し、他国よりも下位の立場に甘んじるのであれば、NY州は政権の無責任な行動とは関係なくパリ協定の基準遵守を誓約するとした。インズリー知事も大統領決定について、「我々の地球や子供達、さらにその子供達を守るのに必要な措置を非難した恥ずべきもの」とした上で、州政府はこれまでどおり、対策の強化を続けていくと明言した。ブラウン知事も、トランプ大統領が「地球温暖化は作り話」と断言していたことに触れ、「事実に抵抗することが良い戦略とは思えないし、米国や他の誰にとっても良くないことだ」と指摘。大統領がこのまま、人類にとって非常に重要な努力から離脱する考えなら、州政府がそれを強化するまでだと述べた。
エクセロン社は、NY州で早期閉鎖のリスクにさらされていたR.E.ギネイおよびナインマイルポイントの両原子力発電所で運転を継続するため、新しい燃料の購入や定期検査の費用として1億8,000万ドルを投じたと説明した。収益の悪化により、2017年1月末で早期閉鎖される予定だったJ.A.フィッツパトリック原子力発電所については、CESが採択された約一週間後、その所有権と運転認可を1億1,000万ドルで購入することで元の持ち主であるエンタジー社と合意。2月に実施した燃料交換とメンテナンスでは1億3,000万ドル以上を投資しており、内外から熟練した作業員を数千人規模で雇用するのに役立ったと指摘した。その上で、これら3つの原子力発電所が合計335万kW以上の無炭素発電設備を提供するなど、NY州がクリーン・エネルギー目標を達成する上で中心的役割を果たすと明言。CESに盛り込まれたZECにより、これらの発電所が2029年までの12年間、「炭素の社会的費用」等に基づいて設定されたMWh毎の補助金を受け取れることから、CESはクリーン・エネルギー目標の達成のみならず、州経済にとっても非常に重要との考えを強調した。