独憲法裁判所が核燃料税は違憲と判断、約63億ユーロが3事業者に返還へ
ドイツの連邦憲法裁判所は6月7日、原子力発電所の新燃料1グラムあたり145ユーロ(約17,880円)を事業者から徴収するという核燃料税はドイツ連邦共和国基本法(憲法)に適合しておらず、無効であるとの判決を下した。2011年1月から施行されたこの税制は、原子力発電所で平均12年間の運転期間延長を許すのと引き替えに、その運転収入の中から税金を国庫に払い込むとされていた。しかし、2011年3月の福島第一原子力発電所事故を受けて連邦政府は直ちに8基の閉鎖を命じるとともに、遅くとも2022年までに原子力発電所をすべて閉鎖すると決定。運転期間の延長という前提が崩れた後も、E.ON社、EnBW社、RWE社の3事業者は核燃料税を払い続けており、2011年から2016年までの合計額は62億8,500万ユーロ(約7,750億円)にのぼっていた。今回の判決について、エムスラントおよびグンドレミンゲン両原子力発電所をE.ON社と共同保有するRWE社は、2016年末までに払い込んだ約17億ユーロ(約2,100億円)が同社に返還されることになるが、判決理由も精査したいとのコメントを発表。ネッカー発電所とフィリップスブルク発電所を所有するEnBW社も、同社の既納分約14億4,000万ユーロ(約1,776億円)に加えて利息が返還されるとの認識を示した。6基の原子炉を他社と共同保有するE.ON社については、28億5,000万ユーロ(約3,515億円)および利息の返還を受けると述べたことが伝えられている。
E.ON社とRWE社は、共同保有するエムスラント原子力発電所の運転会社を通じて、核燃料税の返還をハンブルク財政裁判所に申し立てており、同裁判所は2011年9月、運転会社の主張を支持する予備裁定を下した。しかし、2012年3月に連邦財政裁判所がこれを覆したため、ハンブルクの裁判所は2013年11月、同税の合憲性について連邦憲法裁判所に、EU法との適合性については欧州司法裁判所(CJEU)に上訴していた。CJEUは2015年6月、ドイツ国内の核燃料税はEUの法令に適合していると裁定し、事業者の主張を却下。それ以降、憲法裁判所がドイツ憲法との適合性について、どのような判断を下すか注目されていた。
判決文の中で憲法裁判所は、憲法の関連条項に基づいて審査した結果、連邦政府と州政府は核燃料税を要求する法的権利を持たないと指摘した。核燃料税はある意味、金融法に基づく税制であり、複数の基準に照らし合わせて見ても、同税は立法者が自由に導入できる「消費税」の概念に相当しない。これにより、核燃料税は違憲であると判断し、施行時に遡及して無効にする判決を下したと説明している。