米エネ省、大学等の先進的原子力技術研究開発支援に2017年度は6,600万ドル

2017年6月15日

 米エネルギー省(DOE)は6月14日、国内28州の大学や国立研究所等における先進的な原子力研究、関係施設の共用、分野横断的技術開発、およびインフラ整備などへの2017会計年度分補助金として、合計6,600万ドル以上を支給すると発表した。2016年10月から今年9月までの年度の補助金交付対象として選定されたのは、合計86のプロジェクト。全米トップクラスの大学の科学・エンジニアリング関係学部や学生に、民生用原子力分野で革新的技術やソリューションを開発する機会を提供し、原子力研究における米国のリーダー的立場を維持するのが目的である。DOEのイニシアチブである「原子力エネルギー大学プログラム(NEUP)」、「原子力科学ユーザー施設(NSUF)」、「原子力エネルギー実践技術(NEET)」を通じて、科学者やエンジニアが関係施設を共有して先進的原子力技術の研究開発を継続し、商業化に到達できるよう、毎年支援を行っている。また、DOEは2015年、既存原子炉の安全かつ信頼性のある経済的な運転を保証するとともに、先進的な原子炉設計の商業化に資する技術面、規制面での支援を原子力コミュニティに対して行うイニシアチブ、「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」を創設。多くの原子力技術開発者が、GAINの目標に沿った支援と特殊な研究施設を使用する機会を得られるようになっている。。

 2017年度のNEUPでは、大学が主導する32の研究開発プロジェクトに合計3,100万ドル、3つの統合研究プロジェクトに合計1,100万ドル、および研究炉と関係インフラの改善用として19の大学に合計600万ドルを支給予定。大学に設置されている研究炉25基の一部について、安全性や性能および教育関連のアップグレードを行うほか、学生の研究訓練インフラを拡充する。分野別では「燃料サイクル関係研究開発」、「原子力サイバー・セキュリティ」、「原子炉概念の研究開発および実証」など5つに分類され、現段階で割り当てられたプロジェクト毎の支給額は約80万ドルずつ。「サイクル」分野の研究開発課題としては、事故耐性燃料(ATF)開発に関するプロジェクトがマサチューセッツ工科大を含めて4件あるほか、高速炉の燃料被覆管に使用する新合金開発、使用済燃料から大部分のアクチニドを結晶化して取り除く研究、地層処分状況下の使用済燃料を化学分解するシミュレーション研究などが含まれる。「原子炉概念」分野では、溶融塩炉や高温原子炉、ヘリウム冷却炉等に関するものが多く選定された。

 NEETを通じた支援額は約600万ドルで、大学とDOEの国立研究所および産業界が主導する6つの分野横断的な原子力研究開発プロジェクトに約100万ドルずつ割り振られた。具体例としては、燃料被覆管の製造および原子炉機器表面の摩耗・腐食割れの修繕に使用する低温粉末スプレーの開発、原子炉および燃料サイクル・システムの遠隔モニター用高温埋め込み型センサーの開発などが挙げられる。

 NSUFの支援対象としてDOEは、5つの大学と4つの国立研究所、および産業界の5団体がそれぞれ主導する14の核燃料・資機材関係プロジェクトを選定した。このうち、NSUFを活用するジェネラル・アトミクス(GA)社や大学の共同研究開発プロジェクト6件に対して合計230万ドルの研究費を支給するほか、全プロジェクトに対する施設等の共用費として合計1,000万ドルを支給。NSUFを通じて、中性子とイオンの照射試験や照射後試験施設、シンクロトロン・ビームライン施設、設計・分析試験に対する技術支援など、関係施設と専門的知見を利用する際に使われることになる。