アックユ原子力発電所建設計画でトルコ企業3社がプロジェクト会社に出資へ

2017年6月21日

©アックユ原子力発電会社

 トルコ初の原子力発電所となるアックユ発電所建設計画を請け負ったロシア国営原子力総合企業ロスアトム社は6月19日、プロジェクト運営会社として現地に設立したアックユ原子力発電会社(ANPP)にトルコの大手エネルギー施設建設企業3社の連合体が49%出資することで合意したと発表した(=写真)。地中海沿岸のアックユに120万kWのロシア型PWR(VVER)を4基建設するという同計画では、原子力発電分野で世界初という「建設・所有・運転(BOO)」方式の契約を採用。ロシアが現在100%出資するANPP社は、発電所の建設と所有、および運転で全責任を負う予定だが、2010年にトルコとロシアが結んだ同発電所の建設と運転に関する政府間協力協定(IGA)に基づき、トルコ並びに第三国の企業がANPP社株の49%まで取得することが可能になっていた。正式な出資者協定が今年末までに締結されれば、総工費200億ドルという同プロジェクトの実施に十分な授権資本が確保される見通し。シリア内戦を巡る両国関係の悪化や天然ガスのパイプライン建設交渉などにより同計画は一時期停滞していたが、2023年の初号機の営業運転開始に向けて大きく前進することになる。

 今回、ANPP社への主な出資条件を定めた文書に調印したのは、JENGIZホールディング社とKOLIN建設・観光・通商貿易会社、およびKALYON建設会社。いずれもトルコ内外で産業・エネルギー・インフラ分野の施設建設・操業プロジェクトを請け負った広範な経験があり、BOO方式のプロジェクトも含まれている。トルコ電力市場においても3社は売電・配電事業を扱っており、これら3社による卸売市場の占有率は約30%。ANPP社は原子力発電所の完成後、15年間にわたって発電電力をトルコ電力卸売会社(TETAS)に固定価格で販売して建設費を回収する予定だが、3社の企業連合はANPP社への出資により、アックユ原子力発電所の建設やANPP社の運営管理、および必要とされる資金の調達といった活動に積極的に参加していく考えだ。JENGIZ社はまた、すでに2015年6月にアックユ原子力発電所の海上水利施設を設計・建設するターンキー契約をANPP社から受注済みとなっている。

 ロシアとIGAを締結した翌年の2011年10月、トルコ原子力庁(TAEK)はANPP社に対してサイト許可を発給したのに続き、ANPP社がとりまとめた基本サイト報告書を2013年11月に承認。2014年12月には、書式の変更によりANPP社が再提出を余儀なくされた環境影響声明書(EIA)改訂版をトルコ環境都市計画省が承認しており、2015年4月に起工式が執り行われた。しかし、同年11月に領空侵犯したロシア戦闘機をトルコ軍が撃墜したことから両国の関係は一気に冷え込み、同計画はさらに遅延。2016年8月に訪ロしたトルコのエルドアン大統領の謝罪により関係修復に至っている。

 2017年に入ってからは、TAEKが2月に建設サイトの設計パラメーターを承認したほか、6月15日にエネルギー市場規制庁(EPDK)が2066年まで49年間有効な発電許可をANPP社に発給した。ANPP社側も3月に部分建設許可をTAEKに申請しており、近い将来、林野省が最終的な土地利用許可を、財務省が土地財産権を発給した上で、TAEKが部分建設許可を発給すれば、タービン発電機系統や補助建屋などの非原子力部分で建設活動が許される見通し。主要な建設許可は2018年3月までに取得できるとANPP社は予想しており、これにより原子炉系統部分で最初のコンクリート打設が可能になる。IGAの規定によれば、建設関係の許認可すべてが発給された7年以内に、事業者は初号機の試運転を開始しなければならないことになっている。